財務になるには
- 2020.09.15
財務の概要や仕事内容
財務とは
財務とは、一般企業や団体、官公庁などの組織において、財務業務を担う職業(職種)です。財務業務とは、予算管理や資金調達など、経営資金に関する管理や算定、立案、調達などを行う業務であり、財務担当者は組織運営において重要な役割を担っています。
この財務という仕事は、経理と混同されやすく、確かにこれらはどちらも組織の資金を管理するという点で共通しています。しかし、財務と経理には以下のような違いがあります。
- 財務
今後の資金運用について、算定や立案、調達を行う。(資金調達、予算管理etc.) - 経理
企業が行う日々のお金の取引を管理する。(売上管理、経費管理etc.)
これらは具体的な仕事内容も違っており、財務は未来の資金計画、経理は現状資金の把握を担っていると言えるでしょう。
また、財務はM&Aや株式、債権などにも深く関わるため、経営や金融に関する専門知識は必須です。財務担当者の判断が企業に大きな影響を与えることもあり、その業務には高いスキルが求められます。
財務の仕事内容とは
財務の仕事は「資金調達」「予算管理」「M&A」「資産調整、管理」という大きく4つに分けられます。それぞれの具体的な仕事を挙げてみましょう。
- 資金調達
財務戦略や資金計画の作成、金融機関の融資手続き、株式・債権の発行、調達先への営業 - 予算管理
予算作成、資金目標作成 - M&A
合併・買収に関する情報収集、検討 - 資産調整、管理
既存資産の調整(必要に応じた現金化)、各部の支出把握
このように、財務担当者は、企業の運営資金に関わるさまざまな業務を担います。時には、株式や債権の発行を決めたり、企業のM&Aに財務としての判断を下したりすることもあるでしょう。
これらはどれも大きな責任が生じる業務であり、誰にでもできるものではありません。そのため、財務担当者には、高い財務的なスキルや視点が必要になるでしょう。
財務になる方法
財務担当者になるために、定められている学歴や資格はありません。企業や団体の財務部に配属されれば、誰でも財務業務を行うことはできます。
ただし、先述の通り、財務は専門スキルが求められる職種です。そのため、大学や大学院に進学し、会計学や経営学を学んでいれば、就職やその後の配属は有利になるでしょう。
しかし、希望したからといって必ず財務担当者になれるわけではなく、その処遇は会社次第です。特に新卒で入社した後すぐ、財務部に配属されることはほぼありません。まずは、事務職などで経験を積み、その実績によって財務担当者に抜擢されるというケースが多いようです。
このように、財務担当者になるためには実務経験や専門知識が必要です。そのため、学生時代や入社後に、公認会計士や簿記などの資格学習をしておくのも良いでしょう。
財務に求められる資格や試験
財務を担当するにあたって、必ず取得しておかなければならない資格はありません。ただし、財務は専門性の高い分野であるだけに、取得しておくことで実務に役立てられる資格は存在します。
そして、そのひとつが「公認会計士」資格です。「公認会計士」資格とは、会計のプロである公認会計士として働くために必須となる国家資格です。その内容は財務や経理、株式、M&Aなどにも関連するものであり、財務業務に生かせることから、資格取得後、企業の財務部に公認会計士として所属する人も少なくはありません。
この「公認会計士」試験は、受験資格はないものの、難易度がかなり高いことで知られています。しかし、この資格を取得しておけば、企業の財務担当を目指せることはもちろん、公認会計士としての独立も可能であり、仕事の幅や可能性は広がるでしょう。
難易度や試験について
2019年の「公認会計士」試験の合格率は、10.7%でした。願書提出者の1割しか合格していないことから、試験の難易度の高さが伺えます。
「公認会計士」試験の概要は、以下の表もしくは公認会計士・監査審査会ホームページをご覧ください。
受験日程 | 1次試験:12月
2次試験:8月 |
受験料 | 19,500円 |
試験会場 | 東京都、大阪府、北海道、宮城県、愛知県、石川県、広島県、香川県、熊本県、福岡県、沖縄県 |
試験形式 | 1次試験:短答式
2次試験論文式 |
試験時間 | 1次試験:5時間
2次試験:4時間×2日と5時間×1日の計13時間 |
受験資格 | なし |
合格条件 | 1次試験:得点率70%が目安
2次試験得点率52%基準として審査会が定めた得点比率(ただし、40%以下は不合格) |
※2019年の試験概要です
今後の財務の将来性
資金運用を担う財務業務は、組織運営において省くことができないものです。そして、この業務は組織の将来的な運営に大きく関わるため、財務についての優れたスキルを持つ担当者は、今後も必要とされるでしょう。
しかし、データを用いた計算や分析などという定型的な業務はAIの得意分野です。そのため、将来的に一部の財務業務は、AIによって代替されることが予想されます。
そんな中、財務担当者として長く活躍するためには、ただデータの計算や分析を行うだけでなく、法律や経済に関する知識を学んで専門性を身に付けることが大切です。データだけでは判断できないことに対しての、予測力や分析力、および知識が、これからの財務には求められます。
財務の就職先
財務の就職先は、一般企業や各種団体、官公庁など、多岐に渡ります。組織を運営するために財務業務は必須であり、多くの組織で財務部や財務担当者が配置されているためです。
新卒の場合、財務部を指定した就職は難しいですが、実務経験や実績を積んで適正が認められれば、財務担当に抜擢される可能性があります。
また、中途採用の場合には財務に限定した採用案件が出されていますが、その場合は実務経験者を求めるケースが多いようです。
財務の平均年収・MAX年収
財務担当者の年収は、500万円前後が相場です。日本全体の平均年収が400万円台半ばであることと比較すると、その水準は高めであるといえるでしょう。
ただし、勤める会社の規模や地域、キャリアなどによって、財務担当者の年収は大きく変わります。特に大企業に勤めている場合や役職に就いている場合の年収は高く、その額が平均を超えることも珍しくはありません。
一方、規模の小さな企業に勤めていたり入社して間もなかったりする場合の年収は、平均以下になることもあるでしょう。
財務に向いているのはこんな人
財務担当者には、財務や会計、法律などの知識が必要です。また、資金計画を立てたり融資を受けたり、M&Aに関わったりするためには、さまざまな要素について検討し、適切な判断を行わなくてはなりません。この判断は、企業の経営にも大きな影響を与えます。そのため、財務担当者には、幅広い知識を持ち、数字に強い人や、高い判断力および分析力を持っている人が向いています。
また、自身の仕事が企業の将来を左右するという自覚や責任感も必要でしょう。財務担当者が負う業務の責任は大きく、軽率に業務を進めることは許されません。
さらには、財務担当者は、自社社員はもちろん、出資会社や銀行員など多くの人と関わりながら仕事を行うため、コミュニケーション能力に長けていることも大切です。円滑なコミュニケーションは、円滑な業務にも役立つでしょう。
財務に関連する職業や資格
財務に関連する職業
先ほどもご紹介したように、財務の関連職としてまず挙げられるのは、経理です。これらはどちらも会社の資産を管理するという点で共通しており、同じ事業部に配置している企業も少なくありません。ただし、その具体的な仕事内容は違っており、経理は既に終了した取引の資金管理を、財務は今後行う資金管理および計画を担います。
また、公認会計士も財務の関連職のひとつです。公認会計士は会計に関する幅広いスキルを持つ職業です。企業の財務部に所属して仕事を行うこともあり、その実務内容にも財務が深く関わることから、関連性は深いと言えるでしょう。
財務に関連する資格
「公認会計士」以外の財務に関連する資格には、以下のようなものがあります。
- 日商簿記検定
- 簿記のスキルを問う検定資格。日本ではステイタスの高い資格として知られており、経理はもちろん、財務業務にも役立ちます。業務に生かすなら、2級以上の取得が必要でしょう。
- 経理・財務スキル検定(FASS)
- 経済産業省認定の、経理・財務スキルを測る検定資格。資産・決算・税務・資金の4分野で構成されており、経理や財務に必要な実務知識を身に付けられます。
- 銀行業務検定(財務)
- 銀行業務検定とは、銀行や保険・証券会社の職員を対象にした検定試験です。法務や税務をはじめとした36種の試験が実施されており、そのひとつに財務試験があります。財務は金融関連職にも関連の深い業種であるため、このような試験が設けられているのです。
これらは全て、財務の知識を深めるために役立つ資格です。より高いスキルの習得を目指すなら、受験してみるのもひとつでしょう。
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