社会福祉主事になるには
- 2020.02.28
社会福祉主事の概要や仕事内容
社会福祉主事とは?
社会福祉主事とは、福祉事務所で家庭訪問や面談、生活指導などを行うケースワーカーなどとして働くために必要な「任用資格」です。
任用資格というのは特定の職業や職位に就く際に必要になる資格のことです。
地方公共団体に設置された福祉事務所などの施設で福祉業務に携わる公務員のことをソーシャルワーカー(生活相談員)などと言い、ソーシャルワーカーなどとして働くために必要な任用資格が「社会福祉主事」というわけです。(ただしソーシャルワーカーは広く使われる言葉なので必ずしもこれに当てはまるとは限りません。)
なお、公務員として働くことになりますので公務員試験に合格し採用されなければ社会福祉主事を名乗ることはできません。
ただし、社会福祉施設の施設長などの採用要件に社会福祉主事の取得を持っていることが規定されているなど、資格が準用されることもありますので必ずしも公務員として働く場合にしか必要な資格であるというわけではありません。
社会福祉主事の仕事内容とは?
社会福祉主事の資格者はケースワーカーやスーパーバイザーとして働いています。
それぞれの仕事内容を見てみましょう。
●ケースワーカー
福祉事務所(国や地方自治体が行う社会福祉サービスについての相談機関)を訪れてきた方の生活保護や高齢者・児童・母子・身体障害・知的障害などに関する福祉サービスの相談に乗ります。分野によってはサービス利用開始の決定や調整なども行います。
相談者の状況に応じた生活保護の検討や金額見直しを行うために、家や入院先などを訪問したり、生活状況を記録したりします。
場合によってはハローワークで職探しをするよう指導したり、生活における問題を解決できるように情報提供を行ったりもします。
●スーパーバイザー
ケースワーカーが受け付けた生活保護の申請に対して、申請者の面接を行ったり制度の説明を行ったり、資産や収入、職業、家庭状況などの調査を行ったりします。
スーパーバイザーは福祉事業法によりケースワーカー7名につき1名の配置が義務づけられています。
社会福祉主事になる方法(資格取得方法等)
社会福祉主事になるための試験などはなく、大学や通信教育の履修科目を修了することで取得することができる資格となっています。
取得できる主なルートは以下の5種類です。
①大学・短期大学卒業ルート
大学または短期大学において、厚生労働大臣が指定する以下の社会福祉に関する科目から3科目以上を修めて卒業する。
社会福祉概論、社会保障論、社会福祉行政論、公的扶助論、身体障害者福祉論、老人福祉論、児童福祉論、家庭福祉論、知的障害者福祉論、精神障害者保健福祉論、社会学、心理学、社会福祉施設経営論、社会福祉援助技術論、社会福祉事業史、地域福祉論、保育理論、社会福祉調査論、医学一般、看護学、公衆衛生学、栄養学、家政学、倫理学、教育学、経済学、経済政策、社会政策、法学、民法、行政法、医療社会事業論、リハビリテーション論、介護概論
②通信教育課程ルート(1年)
全国社会福祉協議会が経営する中央福祉学院の社会福祉主事資格認定通信課程または日本社会事業大学の通信教育過程を修了する。
③養成機関ルート(1〜4年)
社会福祉主事養成機関で指定の科目(22科目・1,500時間)を修めて卒業する。養成機関の多くは2年制または3年制の専門学校。
④講習会ルート
都道府県等がおこなう講習会で指定の科目(19.科目・279時間)を修める。
⑤国家資格取得ルート
社会福祉士、精神保健福祉士等の国家資格を取得する。
今後の社会福祉主事の将来性
現在、超高齢化社会の影響で社会福祉を必要とする生活困窮者、虚弱高齢者などに該当する高齢者が増えています。また、ひとり親世帯も増えており、よく問題にされているのはシングルマザー世帯の貧困です。
これらの原因から高齢者の支援や介護などに関する老人福祉をはじめとした社会福祉の需要が増加しています。
そのため、ソーシャルワーカーなどの需要も高まってきているのは言うまでもありません。
社会福祉主事の資格取得自体は難しくありませんが、将来性がある資格です。
社会福祉に興味がある方は取得してみてはいかがでしょうか。
社会福祉主事の就職先
社会福祉主事の主な就職先は
・福祉事務所
・地方公共団体の福祉課
・デイサービス
・特別養護老人ホーム
などが挙げられます。
社会福祉主事の平均年収・MAX年収
社会福祉主事の資格を持って働いている人の多くは公務員です。
そのため給料は公務員の規定に従って支給されます。
例えば東京都の一般行政職として採用された場合、2019年の大卒程度採用の初任給は183,700円 となっています。また、一般行政職の平均給与月額は、448,732円(平均年齢41.7歳)だそうです。年収にすると約750万円になるのではないでしょうか。
社会福祉主事として働く場合はこの一般行政職の給与の規定が適用されると考えられます。自治体によっては福祉職として採用し、少し低めに給与水準を設定しているところもあるそうです。
社会福祉施設の施設長などとして民間で働く場合は、公務員と同等か少し少ない程度の給与になるようですが、経験年数や就職した施設によって給与が異なるため一概に同等とは言えません。
複合型介護サービスセンターのスーパーバイザーとして最大年収800万円や、月給60万円という求人もありましたので、就職先によってはかなり高い年収を得ることができるかもしれません。
社会福祉主事に向いているのはこんな人
社会福祉主事が相談に乗るのは社会的に立場が弱い人たちです。
その人たちの気持ちにより添い、その人たちの立場に立って物事を考えてあげることが大切です。
気持ちに余裕がなく、いやな言い方をしてくる人も中に入ると思いますが、なぜそのような言い方をするのか、なぜそのような考えになったのか、相手の立場に立って考えて理解してあげようとすることで、問題の本質を見抜き、解決をしてあげることができるかもしれません。
社会的に立場が弱いからと言って偏見を持ったり見下したりするような人は、社会福祉主事には向いていないでしょう。
また、詳しい相談内容を引き出すためにはコミュニケーション能力が必要となります。
話しやすい環境を作ってあげたり、親身に話を聞いてあげたりすることで、信頼関係を築くことができて、相談者の悩みを引き出すことができる可能性があります。
同時に、相談者の悩みを解決するためには同僚や関係者などとコミュニケーションを図り、解決に向けて動かなければなりません。
いろいろな人と関わっていくために、しっかりとコミュニケーションをとることができる能力は必須とも言えるでしょう。
社会福祉主事に関連する職業や資格
関連する職業
介護福祉士
要介護者に対する介護や生活援助、要介護者の家族などの介護者に対する介護の指導などを行っているのが介護福祉士です。
実務経験を積み知識と技術をもつ、介護職唯一の国家資格です。
この資格があれば介護の深い知識を持っているだけでなく、介護の土台となる相談業務も行うことができるようになるため、介護の仕事の幅が大きく広がることになります。
社会福祉士
社会福祉主事とよく間違われる資格です。
社会福祉士は国家資格で、社会福祉主事と同じように相談援助業務を行います。社会福祉士の資格は社会福祉主事資格の資格取得要件にもなっていますので、資格を持っていれば自動的に任用資格があるとみなされます。
言ってしまえば社会福祉士は社会福祉主事の上位資格なのです。
精神保健福祉士
精神保健福祉士は精神科ソーシャルワーカーの国家資格です。
社会福祉士が高齢者や生活困難者、子供まで広い範囲で相談援助業務を行うのに対して、精神保健福祉士が相談援助業務を行うのは主に精神障害者の方となっています。
こちらも社会福祉士と同じく社会福祉主事資格の資格取得要件の一つですので、取得していれば自動的に任用資格があるということになります。
医療ソーシャルワーカー
病院の求人などで必須資格として社会福祉主事が挙げられることがあるのが医療ソーシャルワーカーです。
医療機関などで活躍するソーシャルワーカーで、病気になった患者さんやその家族を社会福祉の立場からサポートする役割を果たしています。
ケアマネージャー
ケアマネージャーは要介護者やその家族からの相談に応じて、適切なケアプランの作成・提案・実行をしています。
ケアマネージャーになるには「相談援助業務を5年以上かつ従事した日数が900日以上」という要件を満たして試験を受けなければなりません。つまりケースワーカーなどとして所定の期間、相談業務を行っていた方はケアマネージャーの試験を受けることができるようになります。
ケアマネージャーの資格を取得すれば、介護業界での仕事の幅が広がります。
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