環境計量士になるには
- 2020.12.04
環境計量士の概要や仕事内容
環境計量士とは?
1953年に計量法に基づいて、取引や証明のための正しい計量を行う目的で「計量士」という国家資格の制度が生まれました。
計量法ははかりを用いて取引を公平に行えるよう統一基準を定めるための法律です。
その計量法は1993年に改正され、計量士の資格は「一般計量士」と「環境計量士」に分けられました。
一般計量士は長さや温度、体積、質量など「もの」の尺度を測る計算機器が正確に動作するかを確認します。
一方環境計量士は「環境」の計量を行う仕事で、大気中や水中の汚染物質の濃度や騒音、振動などの大きさを正確に計量することが目的となっています。
環境計量士の仕事内容とは?
そもそも計量士が2つに分かれて環境計量士となりましたが、更に
・環境計量士(濃度)
・環境計量士(騒音・振動)
の2つの分野に分かれています。
環境計量士(濃度)は大気や水質の計量を行います。例えば
・工場から排出される煙や周辺の空気に含まれる有害物質や悪臭物質などの測定
・生活排水などによる汚濁物質排出状況の測定
・河川、湖沼、海域の汚濁状況の測定
・工場跡地等の土壌汚染状況の測定
といったことを行います。
環境計量士(騒音・振動)は文字通り騒音や振動の計量を行います。
騒音源を有する工場や工事現場、道路、鉄道、航空機の騒音を測定したり、それらによって人体に影響を与える振動の測定を行ったりしています。
これらの濃度や騒音・振動について計量や分析、測定をした結果については計量証明書を発行し、環境計量士の押印をすることが法律で義務づけられています。
計量証明書を発行することによってその数値を公にすることができるのです。
環境計量士になる方法(資格取得方法等)
環境計量士になるには資格を取得しなければなりません。
国家試験に合格するか、所定の研修課程を修了するかのいずれかの方法で資格を取得することができます。
国家試験を受ける場合は受験資格などがありませんので、勉強をして受験・合格した後に資格を得ることになります。独学でも勉強することはできますが、かなり難しい試験となっているため大学程度の知識が必要で、最低でも1年間は勉強しないと合格は難しいと言われています。
研修課程は、計量研修センターで行われる一般計量教習を受講した後で特別教習(一般、環境(濃度関係)、環境(騒音・振動関係))を受講して計量士を目指します。この場合は試験を受ける必要はありません。ただし入所試験(高校卒業レベル)がありますのでこの試験には合格する必要があります。なお入所試験の合格率と受講後の修了率はほぼ100%だと言われていますので、国家試験を受けるよりも簡単だといえます。
入所試験に合格することが難しい場合は(理系試験のため文系の方は苦手な可能性があるそうです)専門学校に通って勉強するなどして国家試験を受けることになるでしょう。
国家試験も研修課程も、合格すればすぐに資格を取得できるというわけではありません。国家試験後合格した人は、環境計量講習(濃度は4日間、騒音・振動は5日間)を修了する、もしくは1年間の実務経験を経てからようやく経済産業大臣へ登録することができるようになります。
研修課程の場合は研修修了後2年間の実務経験を積んだ後、計量行政審議会に認められてようやく経済産業大臣へ登録することができます。
資格難易度や試験について
試験について
では参考までに資格認定コースの「環境計量士(濃度関係)」についてみていきましょう。
●試験の概要
受験資格:計量研修センターが実施する一般計量教習を修了した者
教習時期:1月初旬~2月末(7週間)
教習内容:
講義
・基礎科目
・計量管理(不確かさ及びトレーサビリティの基礎を含む)
・環境関係法規
・機器分析
・大気汚染計測
・水質汚濁計測
実習
・SOx分析(イオンクロマトグラフ法)
・ガスクロマトグラフ質量分析
・原子吸光・ICP発光分析
・COD(Mn)の測定
・pH測定とpH計の検査
・ガス濃度計の検査
開催地:計量研修センター(茨城県つくば市)
今後の環境計量士の将来性
日本は毎年のように台風や大雨、自身などの自然災害に見舞われています。
実は災害復旧の場で環境計量士は仕事を行っているのです。計量や分析を行うことによって社会貢献をしているのです。そのため他の国と比較しても環境計量士の需要が高いのです。
また、自然環境の保護や環境問題の深刻化などは国際的な問題となっており、日本も法律の整備や規制の強化を行っています。
環境計量士はそこでも自然を守る役割として計量や分析を行っています。
この先も専門家や有識者の見解によって法律や規制が変わっていく可能性があります。環境計量士はその変化に順応するために知識や計量技術を身につけていかなければなりません。
このように需要が高いことや仕事の専門性の高さから、将来的に環境計量士の待遇が良くなっていく可能性があることから、将来性が高いとも言えるでしょう。
環境計量士の就職先
環境計量士の主な就職先には次のような場所があります。
・一般法人環境分析センター
・水質検査員
・民間企業(環境測定員) など
あまりなじみのない環境計量士という仕事ですが、実は民間に環境調査を行っている会社はたくさんあります。
環境コンサルティングなどの会社だと名前からしてわかりやすいのですが、それ以外にも大手製造業やインフラ系の会社(電力会社やガス会社など)は会社の中に環境分析をする部門を設けていたり、子会社に計量の業務を委託していたりします。
環境計量士の平均年収・MAX年収
環境計量士の平均年収は約400~500万円となっています。
就職先や業務内容によって開きがあるようです。例えば水質調査を主に請け負う事業所だと業務量が一定であることに比例して年収が低めになるようです。
反対に調査項目を多く設定している企業の場合は多くの知識や技術を求められるため、それに比例して年収を高めに設定しているようです。
求人によっては700万円を超える年収を設定している企業もありますので、どこまで業務を行いたいかにもよると言えます。
環境計量士に向いているのはこんな人
計量や計測、分析を行う仕事であるため、学校で科学を学ぶのが好きだった方や専攻していた方などが向いている職業となっています。
豊富な知識を求められますので、学生のうちに環境計量士の資格を取得していれば就職に有利になるでしょう。
前述したように専門家や有識者の見解によって法律や規制が変わるとそれに順応していかなければなりませんので、常に学び続ける姿勢が求められるでしょう。計測機器なども日々進歩していきますので、使い方も常に覚えていかなければなりません。
つまり何かにつけて学び続けていかなければなりませんので、勉強することや知識を身につけていくことが好きでなければ続けていくことが難しい職業だとも言えます。
環境計量士に関連する職業や資格
●関連する資格
●危険物甲種
化学物質を取り扱うために危険物甲種の資格があるとより専門的な仕事を行うことができるでしょう。
危険物甲種とは、消防法に定められているすべての危険物の取り扱い・保安監督業務ができる資格のことです。
取り扱いに危険物取扱者の資格が必要な危険物は以下の通りです。
1.塩素酸塩類、過塩素酸塩類、無機過酸化物などの酸化性固体
2.硫化りん、赤りん、硫黄、鉄粉などの可燃性固体
3.カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウムなどの自然発火性物質および禁水 性物質
4.ガソリン、灯油、重油、アルコール類などの引火性液体
5.有機過酸化物、硝酸エステル類、ニトロ化合物などの自己反応性物質
6.過塩素酸、過酸化水素、硝酸などの酸化性液体
危険物甲種ではこれらすべてを取り扱うことができるようになります。
危険物乙種丙種は、これらの扱いが限定的になりますので取得するなら甲種がおすすめです。
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