貿易事務になるには
- 2020.09.15
貿易事務の概要や仕事内容
貿易事務とは
貿易事務とは、貿易に関わる事務を行う職業です。貿易事務は数ある事務職の中でも非常に専門性が高く、海外と貿易を行うための書類作成や輸出入の手続きを担います。そしてこの業務には、貿易に関する専門知識や英語力が必要になるため、高いスキルが求められる職業としても知られています。
現代において、海外との貿易は、日本の経済を支える大きな要素になっています。しかし、そのための手続きは決して簡単ではありません。言語や文化、通貨が違ったり関税がかかったりすることにより発生するリスクや作業もあるでしょう。貿易事務は、多くの書類作成や相手先とのやり取りを行い、さらには輸送手配や出荷管理などの作業まで担うことで、海外との貿易に伴うリスクを抑え、円滑な取引を進めています。
このように、貿易事務は貿易を行う上で欠かせない役割を果たしています。そしてこの職業は、今後の活躍が期待される職業のひとつでもあると言えるでしょう。
貿易事務の仕事内容とは
貿易事務の仕事は、輸出入に関わる事務を行うことです。そして、その主な仕事は、大きく「貿易書類の作成」、「輸送・通関手配」、「出荷・納品管理」の3つに分けられます。
ここからは、それぞれの具体的な仕事内容を見ていきましょう。
- 貿易書類の作成
貿易にあたって必要になる、取引商品や値段、数、条件などが明記された書類を作成、チェック、送付を行います。
書類の例は、「インボイス(送り状)」や「パッキングリスト」、「信用状」、「船荷証券」など。基本的に扱い書類は、英字書類になります。 - 輸送・通関手配
商品の輸送に関わる手配作業を行います。
例えば、工場や倉庫に対する出荷依頼や輸送手段の手配、通関の手配など。
これらを書類やメール、電話などを用い、これらの手配を整えます。 - 出荷・納品管理
輸出入により出荷、および納品する商品の、データによる在庫管理や納期管理を行います。
貿易事務は、この他にも問題発生時のスケジュール調整や代替対応を行うこともあり、貿易の専門家として海外との取引を支えています。
貿易事務になる方法
貿易事務になるために、定められた学歴や資格はありません。しかし、この職業には語学力や貿易に関する知識が必ず必要になります。
そのため、大学や専門学校で外国語や国際貿易について学んだり、海外留学を経験していたり、またTOEICで高得点を取得していたりすれば、貿易事務としての就職が有利になる可能性があります。
就職先の例としては総合商社や貿易会社などがあり、これらに就職して貿易事務担当に抜擢されれば、貿易事務の業務を行うことができます。ただし、新卒で入社していきなり貿易事務担当を任せられることは少ないでしょう。一方、中途採用の場合であれば、貿易事務に限定した求人が出されていますが、実務経験者であることを条件とするケースが多いようです。
また、貿易事務は正社員だけではなく、派遣社員やアルバイトでの採用もされています。貿易事務は実務経験が重視されるため、非正規で経験を積みその後のキャリアアップを目指すのもひとつでしょう。
貿易事務に求められる資格や試験
貿易事務の仕事を行うために、必ず取得していなければならない資格はありません。しかし、「貿易実務検定」という貿易事務に直結する内容の検定試験は存在します。
この「貿易実務検定」とは、日本貿易実務検定協会によって実施されている検定試験で、名前の通り、貿易実務のスキルを問うものです。この試験は、通算20万人の受験申し込み実績があるメジャーなものであり、毎年学生から社会人まで多くの人が受験しています。
また、「貿易実務検定」レベルはA級・B級・C級の3つに分けられており、その内容は、貿易に関する経済や税務、法務などの実務分野・貿易マーケティング分野・貿易実務英語分野で構成されています。各級のレベルは以下のようになります。
- A級
3、4年以上の貿易実務経験レベル。判断業務を担えるレベル。 - B級
中堅層を対象とした、1〜3年以上の貿易実務経験レベル。 - C級
1〜3年以上の貿易実務経験レベル。定型業務を担えるレベル。
「貿易実務検定」を取得していれば、貿易事務としての就職や実務は有利になるでしょう。
難易度や試験について
2019年に実施された「貿易実務検定」の合格率は、A級が41.5%、B級が約52%(2回の平均)、C級が約64%(4回の平均)でした。級が上がるごとに、徐々に難易度が上がっていくことがわかります。ただし、全体的な合格率が低いわけではなく、きちんと内容を押さえておけば、合格を狙えるでしょう。
試験の概要は、以下の表、または日本貿易実務検定協会のホームページをご確認ください。
A級 | B級 | C級 | |
受験日程 | 7月(12月) | 7月、12月、3月 | 5月、7月、10月、12月、3月 |
受験料 | 12,760円(税込) | 7,480円(税込) | 6,270円(税込) |
試験会場 | 東京・横浜・埼玉・千葉・名古屋・大阪・神戸・福岡・沖縄 ・その他(2020年に限ってweb試験の可能性有り) | ||
試験形式 | 選択式、記述式 | 選択式 | |
試験時間 | 貿易実務・マーケティング2時間、貿易実務英語1時間10分 | 貿易実務・マーケティング1時間45分、貿易実務英語1時間 | 貿易実務1時間30分、貿易実務英語45分 |
受験資格 | なし | ||
合格条件 | 毎回設定される基準点に基づく | 3科目の合計が70%以上の得点率 | 2科目の合計が80%以上の得点率 |
※2019年の試験概要です。また、2020年の試験については、新型コロナの影響につき変更が見られます。
今後の貿易事務の将来性
海外との貿易は、日本の経済にとっても、私たちの生活にとっても欠かせないものです。実際、戦後から日本の輸出入は増加を続け、現在では年間の輸出入総額はそれぞれ80兆円にも達しています。この額は、1950年にはそれぞれ約3000億円ほどでした。つまり、この70年の間に、日本の海外との貿易は、250倍にも膨れ上がっているのです。そして、この貿易の拡大に伴い、輸出入の事務を担う貿易事務の需要は増えています。今後もこの需要が大幅に減るようなことは、まずないでしょう。
また、貿易事務の業務は専門性が高いため、スキルのある人に対しては需要が多く、長く続けやすい職業です。正社員だけでなく、派遣社員やパート、アルバイトなどといった雇用形態の求人もあるため、ライフスタイルに合わせた働き方もある程度叶うでしょう。
貿易実務の就職先
貿易事務の就職先は、総合商社や貿易会社、船舶会社、海運倉庫、メーカーなど、海外貿易を担う企業です。
日本では、海外との貿易が盛んであるため、貿易事務の需要は多く、スキルや実務経験があれば、就職は難しくはないでしょう。また、貿易事務には、派遣社員やアルバイトといった非正規雇用の求人も一定数見られます。
貿易事務の求人自体は東京や大阪をはじめとした都市部が主で、大規模な港がある地域での求人も多く出されています。貿易を行う場所というのは限られており、全国どこでも勤務できるというわけではないので、在住地域によっては、勤務場所について検討しておく必要があるでしょう。
貿易事務の平均年収・MAX年収
貿易事務の年収は、400万円〜450万円がボリュームゾーンであると言われています。これは日本人全体の平均年収とほぼ同じ水準であり、また事務職の中では高めの水準になっています。
ただし、勤める会社はもちろん、キャリアや地域、役職によって年収は大きく変わります。大企業に勤めていたり、貿易事務の管理職になったりすれば、平均を大きく超える年収を得られる可能性もあります。
また、貿易事務として時給で勤務する場合には、1,500円前後が時給相場になりますが、これも会社や地域によって差があります。
貿易事務に向いているのはこんな人
貿易事務に向いている人の条件として、まず語学に堪能であることが挙げられます。貿易事務は、英語をはじめとした外国語で業務を行うことが多く、書類作成や相手先とのメール・電話でのやりとりを行うことを考えると、ライティングの知識も、ヒアリング、スピーキングの知識も必要です。そのため、外国語が不得意であれば業務を円滑に進めることはできません。しかし、優れた語学力を持っていれば、スムーズに業務を行え、リスクも減らすことができるでしょう。
また、事務処理能力が高く、効率的で正確に業務を行える人も、貿易事務には向いています。貿易事務はさまざまな案件や書類を抱え、それらを素早く的確に捌いていかなければなりません。輸出入の手続きにおいては、ちょっとしたミスが、大きなトラブルにつながる恐れもあります。そのため、業務を正確かつスピーディーに行う優れた事務処理能力が求められるのです。
貿易事務に関連する職業や資格
貿易事務に関連する職業
貿易事務に関連する職業には、通関士があります。通関士とは、通関業者や倉庫会社などに所属し、輸出入の申告や関税の納付をはじめとした通関の実務を担う、貿易にとって欠かせない職業です。貿易事務によって手配を受けた通関業務を行うこともあり、同じ貿易に深く関わる職業として、貿易事務と通関士は関連職だと言えるでしょう。
また、一般事務も貿易事務の関連職です。これらは同じ事務職ですが、貿易事務の専門性は非常に高く、担う仕事内容には大きな違いがあります。
貿易事務に関連する資格
貿易事務に関連する資格としてまず挙げられるのが、「TOEIC」です。実務に生かせる英語力を測る「TOEIC」は世界的に知られたステイタスの高い英語資格です。貿易事務には高い英語スキルが要求されますが、「TOEIC」の受験で自分の実力を測り、より良い点数を取るために学習を続けることで、英語スキルの向上が目指せるでしょう。
また、「通関士」資格も貿易事務に関連する資格のひとつです。「通関士」とは、財務省によって認定されている国家資格で、通関業務のスキルを測るものです。これを取得することで、通関士を名乗って働くことができます。通関は貿易に深く関わる業務であり、貿易事務もその手配を担うことがあるため、この関連性は深いと言えるでしょう。
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