食品衛生監視員になるには
- 2020.07.21
食品衛生監視員の概要や仕事内容
食品衛生監視員とは
食品衛生監視員とは、法令に基づき、食の安全を監視し守る職業です。公務員として検疫所や保健所などに所属して、輸入食品の検疫や飲食店に対する調査・指導を行い、国民が口にする食品の衛生や安全が脅かされることのないよう、管理しています。
日本は海外から多くの食品を輸入していますが、それらには日本の基準を大きく超えた農薬や添加物、放射線物質などの危険が含まれている可能性があります。これらが、食品衛生監視員による選抜を受けず、そのまま日本の市場に出てしまえば、国民の健康に害が及ぶことにもなりかねません。また、国内の食品や飲食店においても、安全や衛生の観点から、監視の目は必須でしょう。
つまり、食品衛生監視員は私たち国民が安心して食品を口にするために、欠かせない役割を担っているのです。
食品衛生監視員の仕事内容とは
食品衛生監視員の仕事内容は、国家公務員として検疫所などに勤務するか、地方公務員として保健所などに勤務するかによって変わります。ここでは、それぞれの仕事内容の例をご紹介しましょう。
- 検疫所での仕事
- 輸入食品の監視業務、サンプリング
- 輸入食品の検査、分析業務(微生物検査や理化学検査)
- 飛行機や船、人、動物などに対する検疫衛生業務(感染症や病原体、微生物の侵入を防ぐための検査)
- 保健所での仕事
- 飲食店に対する監視・指導・調査・検査 (立ち入りやサンプリング検査)
- 飲食店の営業許可業務
- 食中毒や事故の調査
- 食品や飲食店に対する相談、苦情対応
このように、検疫所では主に海外から日本へ持ち込まれる食品などの監視を、保健所では国内の飲食店や食品の監視を行っています。
食品衛生監視員になる方法
食品衛生監視員になるためには、「食品衛生監視員」の任用資格を取得しなければなりません。この資格については次章でご紹介しますが、取得のためにはいくつかの条件が定められています。その中でも一般的なのは、食品衛生監視員養成施設や大学の専門コース、専門学校などで規定のカリキュラムを学ぶコースでしょう。
また、学校などで知識を身に付け、「食品衛生監視員」の任用資格を取得した後には、公務員になるための公務員採用試験を受けなければなりません。国家公務員を目指す場合には国家公務員試験を、地方公務員を目指す場合には地方公務員試験を受けることになります。この試験にも合格すれば、厚生労働大臣もしくは都道府県知事認定のもと、食品衛生監視員として働くことができます。
食品衛生監視員に求められる資格や試験
先述の通り、食品衛生監視員には「食品衛生監視員」の資格が必要です。この資格は厚生労働省によって認可される任用資格であり、取得のための試験はありません。しかし、4つの取得条件が定められています。その条件とは以下の4つです。
食品衛生監視員の資格取得要件
①都道府県知事の登録を受けた食品衛生監視員の養成施設において、所定の課程を修了した者
②医師、歯科医師、薬剤師又は獣医師
③大学又は専門学校において医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学又は農芸化学の課程を修めて卒業した者
④栄養士で2年以上食品衛生行政に関する事務に従事した経験を有するもの
(東京都福祉保健局HPより引用
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/shoukai/sikaku.html)
これらのうちいずれかひとつを満たし、必要書類とともに申請を行えば、「食品衛生監視員」の任用資格を取得できます。ただし、食品衛生監視員には21歳以上30歳未満という年齢制限があるので、注意しておきましょう。
また、実際に食品衛生監視員として働くためには、資格取得後に公務員試験を受け、合格しなければなりません。
今後の食品衛生監視員の将来性
平成30年の日本の食料自給率は、カロリーベースで37%、生産額ベースで66%でした。昭和40年には、この数字はそれぞれ86%と73%であり、そこから年々減少傾向にあります。つまり、現在の日本の食は、その多くを輸入に頼っているのです。ただし、輸入食品には感染症リスクや日本の基準に満たない添加物を含む可能性があります。そして、食品衛生監視員は、検疫によりそのリスクを食い止める役割を担い、さらに国内の飲食店や食品についても、厳しい基準に基づいた調査により、安全管理を行っています。
このように、食品衛生監視員の仕事は人々が安全に食品を口にするために欠かせないものであり、食の安全に対する意識が高まりを見せる日本において、今後も需要は大きくなっていくでしょう。
食品衛生監視員の就職先
食品衛生監視員の主な就職先は、厚生労働省管轄の検疫所や各自治体の保健所です。検疫所の場合は国家公務員として、保健所の場合は地方公務員として働くことになります。
どちらの場合も、就職するためには資格取得後に公務員試験を受けなければなりません。そして、これに合格すれば、厚生労働大臣もしくは都道府県知事の任命を受け、赴任することになります。
また、専門的な職業である食品衛生監視員国家公務員枠の採用数はその年によって違い、2018年は62名、2019年は134名が合格、さらに2020年においては25名の採用が予定されているようです。
食品衛生監視員の平均年収・MAX年収
食品衛生監視員は公務員であり、その平均年収は700万円を超えると言われています。日本人全体の平均年収が400万円台であることを考えると、水準がかなり高いことが分かりますね。また、月収の平均は40万円台であり、年収の中でもボーナスの占める割合が大きいようです。
ただし、この年収は年功序列型になっており、年数および勤務年数が長くなるほど高年収になります。初任給は20万円ほどで、一般企業と比べても平均的なので、その後の伸び率は大きいと言えるでしょう。
また、公務員である食品衛生監視員に与えられる手当ては多く、扶養手当や住居手当なども付与されます。
食品衛生監視員に向いているのはこんな人
食品衛生監視員に向いているのは、妥協を許さないきっちりとした性格の人です。食の安全を守ることが仕事である食品衛生監視員には、妥協やあいまいな対応は許されません。それにより、食中毒や有毒な添加物の使用といった消費者への危険を引き起こす可能性があるためです。常に手を抜かない姿勢こそが、食品衛生監視員には求められます。
また、感染症や食中毒を素早く食い止めるためには、優れた判断力も必要です。適切な判断と素早い対応がなければ、人々の食の安全は守れないでしょう。判断の間違いや遅れは、問題を深刻化する恐れもあります。
さらに食品衛生監視員は、食品や飲食店が基準を満たしていなかったり法規を守っていなかったりする場合には、事情に関わらず指導や処分を行わなければなりません。よって、偏った考え方をせずに、事実や数字に基づいて粛々と対応できる力も必要でしょう。
食品衛生監視員に関連する職業や資格
食品衛生監視員に関連する職業
食品衛生監視員は公務員です。そのため、同じく公務員である警察官や市役所の職員、救急救命士、消防士などは関連性が深く、場合によっては連携を取ることもあるでしょう。
また、食品衛生管理者・食品衛生責任者も食品衛生監視員の関連職(資格)と言えます。これは「食品衛生管理者」および「食品衛生責任者」資格保有者が名乗ることのできる職名(資格名)であり職業と呼ぶことは少ないですが、食品の加工や製造にあたって衛生管理・指導を行っています。これらは対象の規模は違うものの、どちらも食品衛生に関わる役割を果たしています。
さらに、医師や歯科医師、獣医師、栄養士も食品衛生監視員の関連職に数えられます。なぜなら、これらの職業は食品衛生監視員として働くために必要な「食品衛生監視員」資格の取得条件のひとつに挙げられているためです。ただし、栄養士には食品衛生行政事務経験が2年以上という条件が加えられているので注意しましょう。
食品衛生監視員に関連する資格
食品衛生監視員に関連する資格には、必須資格である「食品衛生監視員」資格の他に、前章で触れた「食品衛生管理者」「食品衛生責任者」資格が挙げられます。これらはどちらも食品の衛生管理を担うための資格で、食品加工・製造施設等に保有者の配置が義務付けられているものです。衛生管理に関する資格であるこれらは、食品衛生監視員という職業とも関連性があると言えます。
また、「食品衛生監視員」資格取得の条件に挙げられている「医師」「歯科医師」「獣医師」「栄養士」の資格免許も、関連資格に数えられるでしょう。
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