言語聴覚士になるには
- 2019.12.25
言語聴覚士の概要や仕事内容
言語聴覚士とは?
言語聴覚士は生まれながらにして障がいを持った方、病気や発達上の問題などによって話すこと、聞くことだけでなく食べることや飲み込むことに不自由がある方の言語能力や聴覚能力、嚥下能力(食べること、飲み込むこと)を回復させるなどのリハビリテーションを行う専門職です。
言語聴覚士は立つ・座るといった基本的動作のリハビリテーションを行う「理学療法士」や食事・入浴などの日常生活を送れるような回復を目的にリハビリテーションを行う「作業療法士」と同じく、リハビリテーションの国家資格です。
言語聴覚士の仕事内容とは?
では具体的な言語聴覚士の仕事内容をみていきましょう。
言語聴覚士は言語聴覚士法第2条に「音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者」と定められています。
例えば脳梗塞を患ってしまった方は後遺症として失語症(言葉をうまく使うことができなくなる症状)や運動障がい性構音障がい(うまく発音できなくなる症状)などの言語障がいを発症してしまうことがあります。
こういった言語障がいや聴覚障がいなどの問題の本質などを明らかにして、対処法を見出し、リハビリテーションを行うことによって症状の改善の支援を行っていきます。
また、医師や歯科医師の指示で嚥下訓練や人工内耳の調整をすることもあります。
大人の言語障がいなどは病気(脳梗塞、認知症など)や交通事故などが原因で起こることが多いため、話すことができなくなった場合は自分の思いを言葉にしたり表現したりするリハビリテーションを行う、食事を飲み込むことができなくなった場合は飲み込むための反射を高めるリハビリテーションを行うなどといったプログラムの組み立てをします。
子供の場合は言葉の遅れを取り戻すために絵本をみて言葉を引き出すなどのリハビリテーションを行うなどします。
言語聴覚士になる方法(資格取得方法等)
言語聴覚士になるためには、受験資格を得て国家資格に合格し、公益財団法人医療研修推進財団に登録を行う必要があります。
受験資格を得るためには高校卒業後に以下の条件をクリアしなくてはなりません。
・養成課程がある3~4年制の大学・短大・専門学校を卒業すること。
・一般の4年制大学を卒業した後、養成課程がある大学や大学院の専攻科または養成校を卒業すること。
資格難易度や試験について
試験について
言語聴覚士の試験は毎年2月上旬ごろに行われます。
合格率はここ数年70%前後を推移しています。同じリハビリテーションの国家資格である理学療法士や作業療法士は80%前後となっていますので、3つのリハビリテーション国家資格の中では難易度が高いと言えます。
●試験の概要
※下記は2019年度の日程です。
受験書類の配布:各学校などで配布されます。
受験書類の受付:2019年11月25日(月曜日)から同年12月13日(金曜日)までに公益財団法人医療研修推進財団に提出すること。郵送の場合は簡易書留で行うこと。
試験日程:2020年2月15日(土曜日)
試験地:北海道、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県
試験科目:基礎医学
臨床医学
臨床歯科医学
音声・言語・聴覚医学
心理学、音声・言語学
社会福祉・教育
言語聴覚障がい学総論
失語・高次脳機能障がい学
言語発達障がい学
発声発語
嚥下障がい学及び聴覚障がい学
ここから200問出題され、120問以上が合格ラインだとされています。
合格発表:2020年3月26日(木曜日)
今後の言語聴覚士の将来性
高齢化社会の問題として認知症の方の増加が挙げられますが、認知症は大脳皮質の広い範囲に損傷を起こしてしまうため、記憶だけでなくその他機能の低下にも影響を与えます。そのため認知症による言語障がいや摂食障がいなどが起こることがあります。
そしてこの高齢化社会はこれから2040年に向けてピークを迎えていき、その後も高齢化は続き、2060年には高齢者の人口比は40%になります。
つまり、認知症による言語障害などの症状が出ている方のケアを行う者として今後も介護業界などで言語聴覚士は必要とされていくと考えられるため、将来性は十分にあると言えるでしょう。
また、2005年に介護保険法が改正されたことによって言語聴覚士が訪問リハビリテーションを行えるようになるなど活躍の場も増えていますので、ますます言語聴覚士の活躍が期待されていくことになります。
言語聴覚士の就職先
言語聴覚士の主な就職先は次のような場所があります。
- 医療施設
- 大病院、総合病院、リハビリテーション専門病院、リハビリテーションセンター、診療所、認知症専門病院など
- 福祉、保健施設
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、デイサービスセンター、デイケアセンター、訪問リハビリテーションなど - 教育機関
幼稚園、保育園、小・中学校、特別支援学校、小児療育センター、発達障がい児支援センター、言語聴覚士養成施設(大学、短大、専門学校)、児童デイサービス、研究施設など
他にも公務員として働く方や、独立開業をする方もいらっしゃいます。
このように多くの就職先があるのも魅力の一つですね。
言語聴覚士に向いているのはこんな人
言語聴覚士の患者さんは話すことや聞くこと、食べることなどに障がいを持つ人です。
生まれつきの障がいもあれば病気や事故によって障がいを持ってしまった方もいますので、老若男女問わず色々な悩みを抱えている人がいると思います。
そういった人たちの立場や悩みを理解し、気持ちに寄り添ったケアをすることができる人が言語聴覚士に向いている人だと言えます。
また、日々言語聴覚士の基礎である生命科学や脳科学の分野は研究が進められているため常に新しい情報を得ることができる、実際に患者さんと関わる中で「何故こういう反応になったのか」などを追及して変化に気づくことができるなど、常に学んでいく姿勢がある人であることが求められます。
言語聴覚士に関連する職業や資格
関連する職業
言語聴覚士は理学療法士、作業療法士と同じように医師の指示の下でリハビリテーションをすることが義務付けられているため、医師と関わることがほとんどです。
また、治療のためにチームの一員として加わることになりますので、看護師や作業療法士、医学療法士、介護福祉士、ケースワーカー、教員などと連携していくなど、多くの医療関係者と関係していくことになります。
関連する資格
言語聴覚士が仕事をしていく中ではスキルアップをすることが求められます。
例えば患者さんとコミュニケーションを取りやすくするために「手話通訳士」の資格を取る、リハビリテーションだけではなく患者さんに身を任せてもらうために「介護福祉士」の資格を取るなど、患者さんと円滑にコミュニケーションをとっていくための資格を取ることによってスキルアップをしていく方が多いようです。
では、どのような資格があるかチェックしていきましょう。
①手話通訳士
手話通訳士は厚生労働大臣が認定する資格で、20歳以上であれば誰でも資格を取得することが可能です。
リハビリテーション自体が苦痛な患者さんがコミュニケーションも取れないとなるとかなりのストレスを負うことになります。
手話ができることによって円滑なコミュニケーションが取れるようになれば、患者さんとの信頼関係を築くこともできるのではないでしょうか。
②介護福祉士
介護福祉士は言語聴覚士と同じ国家資格で、受験資格が必要ですので取得は簡単ではありませんが、これから迎える高齢化社会の中で需要が高まっていくだけでなく、言語聴覚士とダブルで資格を持っていることによってトータル的にサポートができることになりますので、ぜひ取っておいた方が良い資格とも言えます。
③プロフェッショナル心理カウンセラー
一般社団法人全国心理業連合会公認の心理カウンセラーの資格です。
民間資格ですが、認定教育機関で履修プログラムを受講するなど条件を満たして受験資格を得なければ試験を受けることができません。
言語聴覚士にはカウンセリング的な部分が求められますので、プロのカウンセラーとしてレベルの統一をさせて満足のいくカウンセリングをするという目的があるこの資格を取ることによって、より患者さんの気持ちを理解し、寄り添い、信頼関係を築くことができると期待されます。
④認知症ケア専門士
認知症ケア専門士は、認知症の人やその家族に対して,高い知識と技能に基づいたサービスを提供することを目的とした民間資格です。こちらも受験資格を得るための条件があります。
認知症についての知識を深めていくことで、自分自身がどのように患者さんと向き合うか考えることができ、家族の方の不安の相談にも乗ることができます。
実際に認知症患者さんをかかえる病院で資格を取得している看護師さんなどもいらっしゃるようですので、特に介護施設で働く方にはプラスで取っておきたい資格とも言えます。
他にも嚥下障がいをお持ちの患者さんのケアをするための「栄養サポートチーム専門療法士」や、呼吸のケアをするための「呼吸ケア指導士」など、様々な資格を取ってスキルアップすることができます。
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