医療ソーシャルワーカーになるには
- 2019.12.25
医療ソーシャルワーカーの概要や仕事内容
医療ソーシャルワーカーとは?
医療ソーシャルワーカーとは医療機関などで働く福祉の専門職のことです。
病気になった患者さんやその家族を社会福祉の立場からサポートする役割で、患者さんの経済的な問題や心理的な問題、社会的な問題を解決・援助する業務などを行います。
医療ソーシャルワーカーは資格ではなく、職種です。そのため資格を持っていなくても働くことができます。
医療ソーシャルワーカーの仕事内容とは?
急に病院に入院することになったり長期療養が必要な病気にかかったりすると、いろいろな悩み事が出てきますね。
例えば家族や学校・仕事のこと、それから医療費などの金銭的な面や退院後の生活の面など、人によって内容は違うと思いますが必ず悩み事は出てくると思います。
医療ソーシャルワーカーは、福祉面からそのような悩みを解決・援助していきます。
患者さんやその家族からのありとあらゆる相談を受けますので、必ずしもすべてが当てはまるわけではありませんが、例として次のような相談内容を受けて解決・援助をしていくことになります。
・入退院・転院に関する解決、援助
・経済的問題に関する解決、援助
・心理的問題に関する解決、援助
・受診相談に関する解決、援助
・各種医療費助成制度の説明
・障害者手帳申請方法の説明
・虐待に関する各種関係機関との連絡、調整
・成年後見制度に関する申請の援助
などが挙げられます。
この相談を受けたうえで、入院する部屋や退院時の調整をしたり、自宅に戻れる場合は退院後の生活を送ることができるように自宅改修の提案や福祉用具の調整、在宅介護を受けられるように調整するなどを行います。
自宅に戻ることが難しい症状の場合はリハビリを行うための転院が必要であれば転院先の調整、自宅での介護ができない場合は老人ホームの紹介や入所の調整などを行います。
また、経済的な不安がある方には行政と連携して経済的な救済ができるよう援助を行うなど、患者さんの様々な入退院後の問題を解決・援助していく大切な仕事です。
医療ソーシャルワーカーになる方法(資格取得方法等)
前述したとおり、医療ソーシャルワーカーは資格ではありません。
そのため試験などを受ける必要はありません。
しかし、医療機関で採用をする場合は社会福祉士や精神保健福祉士の国家資格を持っていることを採用条件としているところがほとんどです。
そのため医療ソーシャルワーカーとして働きたいと考えている方はまず社会福祉士の資格を取得しておく必要があります。
社会福祉士も精神保健福祉士も、まずは高校卒業後に大学や短大、専門学校などで学習・卒業(見込みを含む)するなどして国家試験の受験資格を得る必要があります。
受験資格を得たら国家試験を受け、合格後は免許の申請をしてはじめて社会福祉士や精神保健福祉士を名乗ることができるようになります。
それから医療ソーシャルワーカーを募集している医療機関などに就職することになるかと思いますが、必要性を指摘されておりこの先は需要がますます増えていくと考えられているものの、未だ認知度が低く求人は実はそれほど多くないのが現状です。
そのためしばらくは医療や介護など、医療ソーシャルワーカーになった時に役に立つ職場に就職して、転職に向けて知識や経験を増やしておきましょう。
資格難易度や試験について
医療ソーシャルワーカーになるために必要な資格として挙げた社会福祉士と精神保健福祉士の資格難易度や試験内容についてチェックしておきましょう。
●社会福祉士
社会福祉士は日常生活を送ることに支障があるすべての人を対象にした福祉の相談・支援を行います。
行政で働く社会福祉士は、生活が困窮している人の相談に乗り、仕事を見つける支援を行ったり、自立支援給付金や補助金などの制度の利用を促したりします。
施設で働く社会福祉士は、介護保険制度の利用の案内や福祉施設への入居の支援などを行います。
このように患者さんやその家族と医療機関などと連携しながら患者さんが日常生活を送ることができるよう支援していく役割を果たしています。
試験科目は以下の通りです。
【精神保健福祉士との共通科目】
・人体の構造と機能及び疾病
・心理学理論と心理的支援
・社会理論と社会システム
・現代社会と福祉
・地域福祉の理論と方法
・福祉行財政と福祉計画
・社会保障
・障害者に対する支援と障害者自立支援制度
・低所得者に対する支援と生活保護制度
・保健医療サービス
・権利擁護と成年後見制度
【社会福祉士のみの科目】
・社会調査の基礎
・相談援助の基盤と専門職
・相談援助の理論と方法
・福祉サービスの組織と経営
・高齢者に対する支援と介護保険制度
・児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
・就労支援サービス
・更生保護制度
ここから総得点150点分出題され、そのうち60%にあたる90点以上を取得し、かつ全科目すべて1点以上を取得することが合格ラインとなっています。
合格率は2015年から2019年までの平均で約27.6%とかなり低めで、かなり難易度が高い試験です。
●精神保健福祉士
一方精神保健福祉士は、社会福祉士と同じく日常生活を送ることに支障がある方の相談・支援という意味では同じですが、支援の対象が主に精神的な病気や障害を持っている方という点が大きく異なります。
試験科目は、社会福祉士との共通科目のほかに精神福祉士のみの科目があります。
【精神保健福祉士のみの科目】
・精神疾患とその治療
・精神保健の課題と支援
・精神保健福祉相談援助の基盤
・精神保健福祉の理論と相談援助の展開
・精神保健福祉に関する制度とサービス、精神障害者の生活支援システム
ここから総得点163点分出題され、そのうち60%にあたる97点以上を取得し、かつ全科目すべて1点以上を取得することが合格ラインとなっています。
社会福祉士の資格を取得している方は精神保健福祉士のみの科目の80点中60%にあたる48点以上取得し、かつ全科目すべて1点以上取得することが合格ラインとなっています。
合格率は2015年から2019年までの平均で約62%となっており、社会福祉士に比べると合格率は高めです。理由として社会福祉士はかなり出題範囲がかなり広いことに比べて精神保健福祉士のほうが出題範囲が狭いことが挙げられるかと思いますが、合格率が高めだからと言って簡単な試験というわけではありません。
いずれにしてもしっかりと勉強しておかなければ合格は難しいと言えるでしょう。
今後の医療ソーシャルワーカーの将来性
前述したように医療ソーシャルワーカーは必要性を指摘されていますので、この先は需要がどんどん高まっていくと考えられます。
特に高齢化が進んでいるため、福祉施設などで重宝されると考えられます。
しかし、現状はなかなか就職が難しい部分もありますので、ひとまずは社会福祉士や精神保健福祉士として就職をして、求人が出るのを待つという形になりそうです。
将来的には求人が増える可能性があることを考えると、将来性はあると言えるのではないでしょうか。
医療ソーシャルワーカーの就職先
医療ソーシャルワーカーの主な就職先は医療機関です。
医療機関の中では「医療福祉相談室」など、各病院によって名称が異なりますが「相談」といった文字がつかわれている職場で働いていることが多いようです。
他にも保健所や介護老人施設、精神保健福祉センターなどの福祉施設や保健医療機関で活躍しています。
医療ソーシャルワーカーに向いているのはこんな人
医療ソーシャルワーカーは日常生活を送ることが困難な方と深く関わっていくことになります。
その人たちの悩みや困っていることを聞いて、行政や医療機関などと連携しながら問題解決や支援をしていかなければなりません。つまり人と人をつなげていくために、多くの人と関わりを持っていかなければならないということになります。
そのため人のことが好きで、たくさんの人と人間関係を築きながら目標を達成していくことが好きな人であることが求められます。
また、面倒見がよく人を助けるのが好きな人であることも大切な条件の一つです。
困っている人を自ら率先して助けてあげたい、問題解決をしてあげたいと思える人はまさに医療ソーシャルワーカーに向いている人だと言えます。
医療ソーシャルワーカーに相談する方は一人ひとり抱えている問題が異なります。
相談しに来る人がどういった悩みを抱えているのかはしっかりと話を聞くことはもちろん、言いにくいことを抱えているのではないかという鋭い観察眼を持って向き合わなければ気づくことができないことがあります。
まさに「マニュアル通り」にはいかないのです。本当は何を相談したいのだろうか、言いたいことを本当に言えているのだろうか…としっかり観察することができる人が重宝されるでしょう。
医療ソーシャルワーカーに関連する職業や資格
関連する職業
ここまで触れてきたように医療ソーシャルワーカーはたくさんの人に関わります。
患者さんを診ている医師や看護師、介護福祉士などの医療関係者、支援するための行政関係者など様々です。
患者さんが日常生活を送ることができるように支援するために、コミュニケーションをしっかりと取っていける能力も必要ですね。
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