診療情報管理士になるには
- 2020.05.14
診療情報管理士の概要や仕事内容
診療情報管理士とは
診療情報管理士とは、医療機関における診療情報の管理を行う職業です。カルテの情報を国際統計分類などに基づいたデータとして管理し、その分析・活用や情報提供を行っています。
この診療情報管理士という職業は、一般的にはあまり広く知られてはいないものの、現在育成が進められており、医療の質はもちろん、医療に関する政策面の構築においても、大きな役割を果たしています。なぜなら、カルテをはじめとした医療情報には、今後の医療に活かせる莫大なデータが詰まっているためです。診療情報管理士はそれらのデータを活かし、そして守りながら、医療の安全性向上および病院の経営管理に関わっていきます。
また、診療報酬支払制度や病院機能評価、医療事故調査制度など、診療情報管理士が専門性を持って携わるべき医療関連制度の制定も増加傾向にあることから、社会的に見ても診療情報管理士は今後重要な役割を担っていくと予想されます。
診療情報管理士の仕事内容とは
診療情報管理士の主な仕事は、カルテのチェック、データ入力、データ管理です。
具体的には、カルテの記入ミスをチェックしたり、保管・破棄を行ったり、在所確認を行ったりします。また、カルテの情報に基づいたデータ入力、管理も行い、それらの情報を収集・分析して、統計資料を作成したりニーズに応じた情報提供を行ったりすることもあります。
さらに、診療情報管理士の重要な仕事のひとつに、ICDコーディングというものがあります。このICDとはWHO(世界保健機関)による国際的な統計分類のこと。この国際基準に基づいて、各病気に対する医療行為をコード化(コーディング)して登録することにより、疾患の国際比較が可能となるのです。診療情報管理士は専門的知識を活かし、このICDコーディングも請け負っており、これは疾患に立ち向かう上で、世界的に見ても重要な仕事であると言えるでしょう。
診療情報管理士になる方法
診療情報管理業務を行うためには、必須となる学歴や資格はありません。診療情報管理担当として医療機関の採用を受ければ、誰でも業務を行うことができます。実際、元々医療事務を行っていた人が、診療情報管理の仕事も任せられるようになったというケースも少なくはありません。
しかし、診療情報管理士を名乗るのであれば、「診療情報管理士」資格保有が条件となります。診療情報管理の仕事には専門的な知識や技術が求められるため、この資格知識は実務に大きく役立つでしょう。また、「診療情報管理士」資格試験には受験条件としての学歴なども定められていますが、詳細は次章でご紹介しましょう。
診療情報管理士に求められる資格や試験
先述の通り、診療情報管理業務には資格は必須ではありませんが、診療情報管理士を名乗るには、「診療情報管理士」資格が必要です。この資格は、就職にも実務にも大きく役立つでしょう。そこでここでは、「診療情報管理士」資格についてご紹介しましょう。
診療情報管理士資格とは
診療情報管理士資格とは、日本病院会と医療研修推進財団が認定する民間資格です。診療情報管理士の業務に必要な、医療管理や医療統計、診療情報管理といった専門的分野だけではなく、人体構造や臨床医学といった医療に関する基礎分野も含んだ内容となっています。
この試験を受験するためには、以下の受験資格どちらかを満たしていなければなりません。
・日本病院会指定の大学・専門学校(3年以上)を卒業した場合
→必要なカリキュラムを修了していれば、受験資格が得られます。
・指定校以外の大学・短大・専門学校を卒業した場合
→診療情報管理士の通信教育を2年以上受講、修了すれば、受験資格が得られます。
このような受験資格を満たし試験に合格すれば、診療情報管理士としての認定証を受け取れます。日本病院会指定の大学や専門学校は国内に約80校あるので、指定校での修得を経て受験資格を得たい場合には下記URL(日本病院会HP)をご参照ください。
難易度や試験について
平成30年2月に実施された診療情報管理士資格試験の合格率は66.3%でした。総受験者数3868人中、2564人が合格したようです。合格率自体はあまり低くはありませんが、内容は非常に専門的なので簡単な試験とは言えないでしょう。
試験詳細は以下の表をご覧ください。
受験日程 | 2月 |
受験料 | 10,000円(税込) |
試験会場 | 北海道、宮城、栃木、東京、神奈川、新潟、長野、愛知、大阪、岡山、 広島、高知、福岡、鹿児島、沖縄 |
試験形式 | 選択問題(マークシート) |
試験時間 | 専門分野1時間、基礎分野1時間 |
受験資格 | 前章をご参照ください。 |
合格条件 | 不明 |
医師や歯科医師、看護師など一部の職業従事者は、基礎分野の試験が免除されます。
※2020年現在の概要です。
今後の診療情報管理士の将来性
近年カルテの電子化が進み、また医療技術も向上していることから、データとしての診療情報は莫大なものになっています。そして、これらのデータを適切に管理するためには専門知識が必要であり、診療情報管理士のニーズが高まっています。実際、2000年に診療報酬が改定されたことを機に、診療情報管理士を採用する医療機関は増えました。
診療情報管理士という職業は、現在はあまり知られてはいませんが、今後も診療情報管理の量や必要性は増し、診療情報管理士の重要性も広く知られるようになると考えられます。
よって、診療情報管理士の将来性は高く、今後ますます重要な役割を担うこととなるでしょう。
診療情報管理士の就職先
診療情報管理士の就職先は、各医療機関です。大規模病院から小規模な町の病院・診療所まで、多くの医療機関で診療情報管理士は働いています。
ただし、その採用は決して多くはないのが現実。多くの場合は、他の事務仕事と兼業の「医療事務」として募集されることが多いようです。特に規模の小さな医療機関では、幅広い業務を担当しなくてはならないことが多いため、どうしても診療情報管理をメインに仕事を行いたいのであれば、大規模病院の求人を探した方が良いでしょう。
就職活動をする前には、自分の希望する働き方と求人を出している病院のニーズを比較しておくと良いですね。
診療情報管理士の平均年収・MAX年収
診療情報管理士の平均年収は、350万円ほどになるようです。月収は20万円代が多く、同じく病院で事務を担当する医療事務と同等程度になるでしょう。ただし、日本人の平均年収(400万円代)と比較すると高い水準にあるとは言えません。
また、働き方によっても診療情報管理士の年収は大きく変わります。正社員の場合なら賞与が出ることが多いですが、契約社員の場合賞与はなく、もう少し年収が下がる可能性もあります。さらに、パートやアルバイトの場合には時給制になり、その相場は1,000円前後だと考えられます。
診療情報管理士に向いているのはこんな人
診療情報管理士の仕事は、診療情報の管理や運用を行うことです。主にパソコンと向き合って、データを入力したりメンテナンスを行ったりするため、パソコン知識は必須でしょう。
また、そのデータは患者の情報が詰まった非常に重要なものであるため、ミスは許されません。データのミスは、医療報酬の請求はもちろん、患者に施される医療行為にも影響を与える可能性があるためです。よって、情報処理能力が高く集中力がある方やきちんとした性格の方は、診療情報管理士に向いていると言えるでしょう。
また、診療情報管理士の扱うデータは、機密情報にあたり、適切に取り扱わなければなりません。そのため、こういったものに対するモラルやリテラシーを持っていることも、診療情報管理士には重要でしょう。
さらに、仕事に対する計画性に加え、医療に関する基礎知識がある人も、診療情報管理士に向いていると考えられます。
診療情報管理士に関連する職業や資格
診療情報管理士に関連する職業
診療情報管理士に関連する職業には、「医療事務」があります。診療報酬の計算を行うことを主な仕事とする医療事務ですが、現在は診療情報管理士の仕事を兼ねていることも多く、特に小規模な医療機関においてその傾向が見られます。
また、大規模病院にてカルテの管理や手続きなどを行う「病棟クラーク」や医療機関で使用するシステムを開発する「医療情報技師」なども、医療分野において情報を扱う点で診療情報管理士の関連職と言えるでしょう。
診療情報管理士に関連する資格
診療情報管理士に関連する資格としては、「医療事務技能審査試験」や「診療報酬請求事務能力認定試験」などが挙げられます。これらは主に医療事務の仕事に役立つものですが、診療情報管理士の実務にも関連する部分があります。また、これらを取得しておけば医療事務もこなせると見なされ、就職が有利になる可能性もあるでしょう。
また、「ICDコーディングスペシャリスト」や「ICDコーディング技能検定」などという民間資格も存在し、これらも診療情報管理士の仕事であるICDコーディングの実務において活かせるでしょう。
-
前の記事
柔道整復師になるには
-
次の記事
サウンドクリエイターになるには