介護食士になるには
- 2020.02.28
介護食士の概要や仕事内容
介護食士とは?
介護食士は内閣総理大臣認定・公益社団法人全国調理職業訓練協会が主催する、介護に携わる方たちの調理技術を向上させる目的で設けた認定資格制度です。
公益事業として認定されています。
人は高齢になると、若い頃と違い、歯が抜けたり、義歯の調子が悪くなったり、飲み込む力が弱くなったり時にはむせてしまったりして、十分に食事をとることができなくなってしまいます。
食べることは体に必要な栄養を満たして生きていくことです。また、食事はただ食べるだけではなく、楽しみの一つでもあります。厚生労働省の文書によりますと「施設に入所(入院)している要介護高齢者の楽しいことの第1位は食事である。」とされています。
このように食事は必要で重要なことですから、要介護者にとって介護食は生きていくためになくてはならないものです。
こういったことから介護食に関する知識は、ホームヘルパーや栄養士、調理師、介護福祉士など、介護の仕事に携わる方に人気があるのです。
介護食士は、要介護者向けの食事の提供についての専門知識を学んだ人に与えられる資格です。
介護食士の資格は1級から3級まであります。全国の調理学校などで学校に在籍する学生だけでなく介護職員を含む一般の方まですべての方を対象に介護食士講習会を開講しています。(2級以上は受講要件があります。)
特に3級の講習会は、介護食の基礎知識を取得できるので、介護食に興味がある方や実際に介護食を作っている介護者など、一般の方も数多く受講しています。
介護食士の仕事内容とは?
具体的な仕事内容は、要介護者や障害者に対して一般食や特別ケア食の調理を行ったり、利用者の好みに合わせて味付けをして栄養補給に対応したりすることです。
また、各家庭や個人に対して少量調理や食品保存の知識、衛生管理などの指導を行うこともあります。
自分の口で1日三度の食事をきちんと摂ることは、栄養をとるだけではなく食の喜びを味わい、脳への刺激や健康的な生活をおくることにつながる大切な要素です。
安全で理にかなった食事づくりをすることは要介護者の健康維持と生きがいをサポートする大切な役割なのです。
介護食士になる方法(資格取得方法等)
介護食士になるためには、全国の認定校(調理学校)で講習を受けて、試験に合格しなければなりません。
ただし、きちんと講習を受けてから試験を受けますので、正確な合格率は発表されていませんが90%以上の方が合格するそうです(ほぼ100%合格するという記載もあるほど高確率で合格できるそうです)。
3級はどなたでも受講・受験できますが、2級以上は要件がありますので確認しておきましょう。
●受験資格
【1級】介護食士2級を取得した後、2年以上介護食調理の実務に従事した25歳
以上の方
【2級】介護食士3級を取得した方
【3級】どなたでも受講できます。
資格難易度や試験について
試験について
受験書類の受付:試験地により異なります。
受講日や試験日、申込期間などすべて試験地ごとに日にちや時間が異なるため、各試験地に確認する必要があります。
試験日程:試験地によって異なります。
試験地:全国54の協会指定の認定校
(全国の認定校で1~3級すべての資格を取得できるわけではありません。3級のみ受講可能という試験地も多く、1級は全国にわずか3ヶ所しかありません。)
試験科目:講習(学科+実習)+修了試験
合格ラインは学科・実習ともに60点となっています。
また、総授業時間数の80%以上の出席がなければなりません。
●出題範囲
【1級】
学科32時間
①医学的基礎知識
②高齢者にかかわる制度
③栄養学
④食品学
⑤食品衛生学
実習40時間
①調理理論
②調理実習
【2級】
学科16時間
①医学的基礎知識
②高齢者の心理
③栄養学
④食品学
⑤食品衛生学
実習56時間
①調理理論
②調理実習
【3級】
学科25時間
①介護食士概論
②医学的基礎知識
③高齢者の心理
④栄養学
⑤食品学
⑥食品衛生学
実習47時間
①調理理論・調理実習Ⅰ
②調理理論・調理実習Ⅱ
●修了資格
【1・2級】
・授業時間数の80%以上に出席すること
・学科試験と献立作成及び料理作成に合格すること
【3級】
・授業時間数の80%以上に出席すること
・学科試験に合格すること
合格発表:試験地によって異なります。
今後の介護食士の将来性
少子高齢化の影響で介護の需要は、今後ますます増えていきます。
社会保障審議会の『介護分野の最近の動向』によると、要介護率が高くなる75歳以上の人口は、2055年には25%を超えます。
要介護者が増えるということは介護者も必要になります。そのため介護の需要はこれからも増え続けることは間違いありません。
しかしその一方で、少子化が進んでいることもあり日本の総人口は減っていく予想です。内閣府のデータによれば、2048年には1億人を割り、2060年には8,674万人まで減少すると言われています。要介護者が増える一方で、介護者の人手不足に陥ってしまうことは介護の課題なのです。
そうでなくても現在すでに6割を超える介護施設では人手不足だとしており、人員不足はもはや慢性的な問題となっています。
人手不足の一番の原因は、給料の低さです。
『会社四季報 業界地図』2018年版によると、介護職の年収は2年連続で最下位でした(ただし企業によります)。
しかし、高齢化社会や人手不足を解消するために国はさまざまな取組をおこなっています。たとえば厚生労働省は、勤続10年を超える介護福祉士に対して、月額8万円の給料アップの計画をしています。
他にも働き方改革によって業務内容の見直しがされており、例えば業務軽減のためにペーパーレス化が進められるなど介護職の仕事も変わりつつあります。
今後の状況を考えると、さらに待遇や環境は改善されていくことが期待されます。
介護の仕事はなくなりませんし、これからますます需要が増えます。
そうなると仕事に困ることはありません。また、給与面はこれから改善されていく可能性があります。
介護食士については、仮に介護の仕事をしていなくても食について学ぶことができますし、将来自分が介護者になったときに役立ちます。
将来性は十分にあるといえるでしょう。
介護食士の就職先
介護食士は介護食のプロとしての知識・技術を証明する資格のことですので、例えばホームヘルパーのように介護食士という仕事ではないのです。
わかりやすくいうと、ホームヘルパーや社会福祉士などの介護職員や看護師、調理師、栄養士などの資格保持者が、介護の現場で活用できる資格として介護食士も取得するのです。働く上での資格が介護食士ということになります。
介護食士を持つ方が働く施設としては
・訪問介護事業所
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
・介護老人保健施設
・グループホーム
・老人デイサービスセンター
・養護老人ホーム
・軽費老人ホーム
・有料老人ホーム
・サービス付き高齢者向け住宅
などが挙げられます。
介護食士の平均年収・MAX年収
介護食士は職業ではないため、介護食士の資格を持っている方の職業によります。
前述した職業の中だと、看護師の年収が一番高くなっています。
参考までに介護施設で働いている看護師の年収を調査したところ、平均年収は約460万円で、高い方の年収は約700万円でした。
年収が高い方は介護施設で夜勤をされている方が多い傾向でした。
介護食士に向いているのはこんな人
食と健康に興味のある人や、食・介護に関わる仕事に就いている人に向いている資格です。
また、介護が必要な方の健康を食から考えていきたい人や高齢者に現在提供している食事をより充実させたいと考えている人にはおすすめの資格です。
介護食士に関連する職業や資格
関連する資格
介護食マイスター
介護食マイスターは日本安全食料料理協会が主催する資格です。
介護食について基本的な知識を持っている人に与えられる資格で、介護食の作り方をはじめ介護食の種類や食べ始めるタイミング、常態に応じた介護食の種類などの知識が必要になります。
また、高齢者と栄養の関係や具体的なケアなどの知識や技術を身につけることができるため、介護食について詳しく知りたいという方にもおすすめの資格です。
介護食作りインストラクター
介護食作りインストラクターは日本インストラクター技術協会が主催する資格です。
介護食作りインストラクターはインストラクターとしての介護食の役割や介護食の作り方に関する基本的な知識が必要になります。
介護食の栄養バランスや施設での食事はもちろん、誤嚥が原因で起きる肺炎を防止するための注意点や高齢者の口腔ケアに関しても学ぶことができます。
さらに高齢者の機能低下に応じた様々なレシピを学ぶこともできます。
-
前の記事
社会福祉主事になるには
-
次の記事
帽子デザイナーになるには