和裁士になるには?│仕事内容や資格、おすすめの学校もご紹介!
- 2020.07.21
和裁士の概要や仕事内容
和裁士とは
和裁士とは、着物の仕立てを行う職業です。反物の状態の生地から裁断や縫製を行い、小紋や絣といった長着や和装用の下着にあたる襦袢、羽織、袴などの和装品を生み出します。和裁士は、呉服店や顧客からオーダーを受けて着物を製作する他、ニーズに応じた着物の直しも行います。
そんな和裁士が手掛ける着物の仕立てには、和裁ならではの知識と技術が必要です。さらに、洋裁と違ってミシンが用いられることは少なく、多くの場合、手縫いで仕上げられることから、強い根気も求められます。手作業により着る人に合わせたオーダー品を主に生産する和裁士の仕事は、機械による量産が主流となっている近年の洋服生産とは、大きく異なると言えるでしょう。
また、和裁士は和裁の後進指導を担うこともあり、着物の仕立てという日本の伝統文化を後世に繋いでいます。
和裁士の仕事内容とは
和裁士の仕事は、大きく分けて3つあります。それは、「仕立て」「直し」「指導」です。
それぞれの具体的な仕事内容を見ていきましょう。
仕立て
反物から、和裁独自の多くの工程を経て着物を仕立てます。着物には、TPOや格に応じたさまざまな種類があり、また帯や羽織、襦袢など合わせる着物用品も多くあります。仕立てを行う和裁士は、このような着物や着物用品を広く手掛け、優れた手縫いの技術によって完成させます。
直し
着物は、着る人や成長に合わせて直しを重ねながら、長く着られることが多い衣類です。和裁士はこの直し作業も手掛けており、それぞれの着物の状態に応じて、サイズ調整や劣化部分の修正を行います。
指導
着物の仕立て技術を指導し伝えていくことも、和裁士の重要な仕事のひとつです。弟子を取ったり教室を開いたりして、弟子や参加者に和裁の指導を行い、伝統技術を後進に伝えています。
和裁士の中には、仕立てだけを手掛ける人も、指導だけを手掛ける人もいます。
また、仕立てや直しはオーダーを受けて行うため、呉服店や顧客との打ち合わせを行うこともあるでしょう。
和裁士になる方法
和裁士になるためには、まず「大学や服飾専門学校の和裁コース」もしくは「民間スクール」、「個人の和裁教室」などで和裁を学ぶのが一般的です。
和裁には専門的な知識と技術が必要であるため、独学よりも、これらのような育成機関の方が、効率的で確実な学習ができるでしょう。
また、和裁の知識と技術を身に付けた後に、和裁所や和裁縫製所に就職すれば、和裁士として本格的な仕事を始められます。ただし、多くの場合、最初は見習いとして下積みを行います。雑務をこなしながら、先輩に学び、和裁士として成長していくことになるでしょう。
和裁士になるにあたっては、定められた学歴や資格はありません。しかし、「和裁技能士」を名乗って働くためには、指定資格の取得が必須になります。
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【松屋銀座でファッションショー。伝統ある百貨店が母体です。】
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東京ファッション専門学校
和裁士に求められる資格や試験
先述の通り、和裁士として働くための必須資格はありません。しかし、「和裁技能士」として働くためには、厚生労働省によって実施されている「和裁技能士」国家技能検定に合格しなければなりません。
この「和裁技能士」国家技能検定とは、和服の仕立てに必要な知識や技術を問うもので、その内容は裁断や縫製、染色、手入れ、色彩、衛生など多岐に渡ります。また、レベルは1級〜3級、試験は筆記試験と実技試験に分けられており、実技試験では採寸から仕上げにいたるまでの和服製作が実施されます。ただし、この検定を受験するためには、級に応じた条件を満たさなければならないので、注意しましょう。
各級の試験に合格すれば、それぞれ「1級和装技能士」、「2級和装技能士」、「3級和装技能士」を名乗れます。
「和裁技能士」国家技能検定は、和裁関連の資格の中でも評価が高く、この取得は就職やその後の実務に役立つでしょう。
難易度や試験について
「和裁技能士」国家技能検定の合格率は、3級が80%、2級が55~60%、1級が50~60%ほどだと言われています。3級は比較的優しく、2級1級になると、難易度はやや上がるようです。
試験の詳細は、以下の表および厚生労働省ホームページをご確認ください。
1級 | 2級 | 3級 | |
受験日程 | 実技試験1月/学科試験2月 | ||
受験料 | 実技試験16,500円/学科試験3,100円 | ||
試験会場 | 全国の指定会場 | ||
試験形式 | 筆記試験(四肢択一)/実技試験(縫製) | ||
試験時間 | 実技試験7時間30分
学科試験1時間40分 |
実技試験6時間30分
学科試験1時間40分 |
実技試験3時間30分
学科試験1時間 |
受験資格 | 以下のいずれかを満たすこと
・7年以上の実務経験保有者 ・2級合格後2年以上の実務経験保有者 ・3級合格後4年以上の実務経験保有者 etc. (経験や学歴によって異なるので、厚生労働省HPでご確認ください。https://www.mhlw.go.jp/general/seido/syokunou/ginou/aramashi/menjyo.html) |
以下のいずれかを満たすこと
・実務経験2年以上保有者 ・3級合格者etc. (経験や学歴によって異なるので、厚生労働省HPでご確認ください。https://www.mhlw.go.jp/general/seido/syokunou/ginou/aramashi/menjyo.html) |
以下のいずれかを満たすこと
・半年以上の実務経験保有者 etc. (経験や学歴によって異なるので、厚生労働省HPでご確認ください。https://www.mhlw.go.jp/general/seido/syokunou/ginou/aramashi/menjyo.html) |
合格条件 | 不明 |
※2020年現在の概要です。
今後の和裁士の将来性
長らく、日本では着物の着用が一般的でした。しかし、現代において和服を着る人は減少し、年々和服の市場規模は微減傾向にあります。また、和服の生産にも機械による大量生産が取り入れられるようになり、手作業による和裁士の仕事は減少しています。今後も、日本で着物を着る人や和裁士に着物をオーダーする人が大幅に増えることは考えづらいでしょう。
しかし、和裁士の需要は極端に減ってはいません。なぜなら、高齢化により和裁士の数自体が減っているためです。
このように、着物および和裁士の需要と供給のバランスを保つのは難しく、将来性についても一概には言えません。
とはいえ、和服の価値は、インバウンド客により見直されつつあります。世界的にも着物は有名になり、伝統文化として広く知られるようになりました。このような流れを汲み、今後和裁士として長く活躍するためには、伝統文化としての和裁技術を海外に発信していくこともひとつの方法でしょう。
和裁士の就職先
和裁士の就職先は、和裁所や和裁縫製所です。和裁所・和裁縫製所とは、着物の仕立てを専門に行う会社であり、和裁士が所属して、呉服店から依頼を受けた仕立てを行っています。このような和裁所に就職するためには、仕立ての技術や和裁技能士資格の有無などが問われるでしょう。また、多くの和裁所では正社員だけでなく、パートの採用も行っており、和裁の技術を持つ主婦の雇用も珍しくはありません。
さらに、和裁士の中にはフリーランスとして活動する人も多くいます。その場合は、呉服屋や仕立て屋、個人客から依頼を受け、仕事を行います。ただし、フリーランスとして十分な仕事を得るためには、技術や納期の面での信頼性が重要になるでしょう。
素晴らしい染や織の施された多種多様なきものを作り上げる技・知識を兼ね備えたのが高度専門士、すなわちプロ和裁士です。
本物の着物を仕立てる、本当のチカラを持つきもののプロとして活躍できる人を社会に送り出すことを目的として、共に人格形成を教育しているのが「奈良きもの芸術専門学校」です。
本校は、昭和3年設立以来令和の現在に至るまで着物作りに思いきり打ち込める環境を提供し続けてきました。着物を作ることを通して、着付けやマナー、伝統文化なども積極的に学ぶことができます。奈良という魅力的なロケーションにより、遠方から入学を希望する学生も多いです。
【和裁教育指導三本柱】
1.美しく着やすい着物
2.奥深い知識
3.スピード
奈良きもの芸術専門学校
和裁士の平均年収・MAX年収
和裁士の年収については情報が乏しく、平均を正確に挙げることはできませんが、その水準は低めであると言われています。和裁所や和裁縫製所に勤めている場合には、月給18万円〜20万円程度が相場でしょう。見習い和裁士であれば、さらに給与の水準は下がります。
また、フリーランスの和裁士として働く場合には、仕立てる着物の種類や仕立て日数によって金額が決められていることが多いため、仕事量が収入に直結します。さらに、和裁士としての実務経験や腕前が金額に反映されることもあるため、高い技術を持つベテランの和裁士であれば、平均の水準を超える収入を得られる可能性もあるでしょう。
とはいえ、フリーランスの中には、年収が150万円を切る和裁士もいます、
和服の市場規模は縮小しつつあるため、仕事を得ることも簡単ではないでしょう。
和裁士に向いているのはこんな人
和裁士に向いているのは、手先が器用でコツコツと作業することが苦にならない人です。着物を仕立てるためには、長い時間をかけて細やかな縫製を行わなければならないためです。特に手縫いは粗が目立ちやすいため、手先の器用さは、良い着物を仕立てるために必須でしょう。器用さによる高い技術は、和裁士としての評価にも直結します。
また、着物や日本の文化が好きであることも、和裁士にとって必要な要素です。着物の仕立ては大変労力がいる仕事ですが、このような熱意があれば、やりがいを持って作業を行えるでしょう。さらに、日本の伝統文化を扱い伝えるという役割を担う上でも、着物および日本文化に対する熱意は重要です。
和裁士に関連する職業や資格
和裁士に関連する職業
和裁士に関連する職業には、パタンナーがあります。パタンナーは型紙を作り洋服の生産に携わる職業ですが、和裁士は和服の仕立てにあたってパタンナーの役割も担います。扱う服の種類は違うものの、服の製作に関わるという点で、和裁士とパタンナーには共通性があると言えるでしょう。
また、着付師も和裁士に関連する職業として挙げられます。着付師は着物の着付けを行う職業であり、和裁士と同じように着物を扱います。そして、これらの職業はどちらも、職務を通じて日本の伝統文化である着物の発展や新興に貢献しています。
和裁士に関連する資格
和裁士に関連する資格には、先述の「和裁技能士」以外にも、東京商工会議所による「和裁検定」があります。こちらは和裁の実技と筆記試験からなる民間検定で、その内容は和裁士の仕事に役立ちますが、やはり国家技能検定である「和裁技能士」の方が広く知られており、ステータスが高いようです。
また、同じく国家技能検定のひとつである「着付け技能士」も、和裁士の関連資格に数えられます。これらは和裁と着付けで内容は違いますが、どちらも着物に関する知識を高めるものです。そのため、それぞれの職にその知識は生かせるでしょう。
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