入国警備官になるには

  • 2020.02.28
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入国警備官の概要や仕事内容

入国警備官とは?

 入国警備官とは、法務省に所属する国家公務員の専門職です。
 国家公務員のうち「公安職」に分類されますので、わかりやすくいうと地方公務員である警察官や消防吏員(消防官)などと同じように治安維持に従事するものとして規定された公務員の職の一つです。国家公務員法の適用としては警察職員として扱われていることからもわかります。

入国警備官の仕事内容とは?

 日本には世界各国から多くの人がやってきます。
 入国の目的は仕事や観光、実習など様々ですが、中には偽りの目的で入国して不法就労や不法滞在、さらには罪を犯す外国人もいます。
 入国警備官はこのような外国人を厳正に対処し、国民の安全や生活を守るという大切な役割を果たしています。

では入国警備官がどのような業務を行っているのか具体的にチェックしてみましょう。

 ●違反調査
   自らが得た情報や一般人から提供された情報をもとに、入国管理法に違反している疑いがある外国人を調査します。
   日本には多くの外国人がいるため違反者を見つけることは簡単ではありません。そのため様々な情報を集め、つなぎ合わせて違反者の検討をつけていきます。そして最終的には違反者本人や関係者に取り調べを行うなどして、調査を進めていきます。

 ●摘発
   違反調査を行った結果、捜査を行う必要があると判断されることがあります。
この場合は裁判所の許可を得ることによって強制的に捜査をすることができます。
捜査によって違反をしていることが確実になれば摘発をすることになります。

摘発をするには、入国時の審査などを行う“入国審査官”の上級職である主任審査官が発布する収容令書が必要です。収容令書によって違反者の身柄を拘束することができるようになります。

違反者が逃亡するのを防ぐため、摘発を行うのは早朝や深夜の時間帯になることがあります。場合によっては違反者が働く工場などの危険な場所に足を運ぶこともあるようです。
確実に違反者を摘発するためには、それこそ警察官と同じように素早く行動をし、素早い判断をしなければなりません。

 ●収容
摘発によって身柄を拘束された違反者や、自ら出頭した外国人のうち身柄を拘束す  る必要のある外国人は、一時的に地方出入国在留管理局に設置されている収容施設に  収容されます。
   収容施設への収容手続きや施設の警備、収容中の外国人の処遇も入国警備官が行います。

 ●送還
   収容後、違反審査を行われた結果“退去強制令書”が発布された外国人は速やかに国籍がある国に送り返すことになります。この業務を送還といいます。
   送還の手続きから、空港までの護送までを行い、確実に日本から出国させるために退去強制令書を執行していきます。

   直ちに送還することができないと判断された外国人は入国管理センターに収容されます。入国管理センターの収容者の管理を行うのも入国警備官の業務となります。

入国警備官になる方法(資格取得方法等)

 入国警備官になるためには、まず人事院の「入国警備官採用試験」を受験し、合格しなければなりません。合格者は成績上位の者から採用候補者名簿に記載され、その中から全国の地方出入国在留管理局または入国者収容所入国管理センターに採用されます。
 つまり試験に合格したからといって必ず採用されるというわけではありません。
 2018年の実績によると、試験の申込者数は2,072人で、そのうち合格者数は185人でしたが採用予定人数は90人となっており、合格者数の半分は不採用になると考えられます。
 合格率は約11.2%とただでさえ低い数字ですが、採用されるのはさらにその半分です。しっかりと勉強をして試験を高得点で合格しておかなければ採用される可能性が低くなってしまいます。

 入国警備官の国家試験には受験資格があります。
 中卒以上の枠と社会人枠がありますので、それぞれチェックしてみましょう。

 ※こちらは2019年度の採用試験の受験資格要件です。
①警備官
(1)2019年4月1日において高等学校又は中等教育学校を卒業した日の翌日から起算して5年を経過していない者及び2020年3月までに高等学校又は中等教育学校を卒業する見込みの者
(2)人事院が(1)に掲げる者に準ずると認める者

②警備官(社会人)
1979年4月2日以降に生まれた者(上記1の(1)に規定する期間が経過した者及び人事院が当該者に準ずると認める者に限る。)

 このように、年齢制限は設けられていますが学歴については不問となっています。
 ただし、次のいずれかに該当する場合は一次試験に合格したとしても二次試験で不合格になってしまいますので注意してください。
  ・裸眼視力がどちらか1眼でも0.6に満たない者(ただし,矯正視力が両眼で1.0以上の者は差し支えない。)
  ・色覚に異常のある者(ただし,職務遂行に支障のない程度の者は差し支えない。)
  ・四肢の運動機能に異常のある者

資格難易度や試験について

試験について

 では試験の内容についてチェックしていきましょう。

 ●試験の概要
 ※下記は2019年度の試験の日程です。
  受験書類の受付:2019年7月16日(火)~7月25日(木)
          原則インターネット申し込み。インターネット申込みができない特段の状況がある場合は、出入国在留管理庁地方出入国在留管理局(支局)又は人事院各地方事務局・沖縄事務所に問い合わせる。

  試験日程:第一次試験日…2019年9月22日(日)
       第二次試験日…2019年10月23日(水)~10月25日(金)
              第一次試験合格者に合格通知書で指定する日時を通知。
  試験地:第一次試験、第二次試験共通
      札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、広島市、高松市、福岡市、
      那覇市

  試験科目:第一次試験…基礎能力試験(公務員として必要な基礎的な能力(知能および知識)についての筆記試験)
作文試験(文章による表現力、課題に対する理解力などについての筆記試験)

       第二次試験…人物試験(人柄、対人的能力などについての個別面接)
             身体検査(主として胸部疾患(胸部エックス線撮影を含む)、血圧、尿、その他身体検査)
             身体測定(視力、色覚についての測定)
             体力検査(立ち幅跳び、上体起こしによる身体の筋持久力等についての検査)

  合格発表:第一次試験…2019年10月9日(水)
       最終合格発表…2019年11月19日(水)

今後の入国警備官の将来性

 日本政府観光局(JNTO)が発表した2019年度の訪日外国人数の推計値は3,188万2,100人となっており、過去最多を更新したそうです。また、2020年には東京オリンピックがあることなどから、政府は訪日外国人旅行者4,000万人を実現させたいとしています。

 東京オリンピックを始め2025年の大阪万博などの観光目的だけでなく、少子高齢化による外国人労働者の受け入れなどもあるため、訪日外国人は年々増加傾向にあります。
 外国人が増えるということは、違反者から日本人を保護するために働く入国警備官の需要も増えていくということになります。

 公務員なので給与がある程度安定していることや、倒産やリストラの心配がないという面もありますが、一方で文化や思考が異なる外国人を相手にするため危険を伴う楽な仕事ではなく離職率も高いといいます。
 安定しており需要もあるためこれからの将来性は十分にあると考えられますが、続けていくには強い意志が必要になるのではないかと考えられます。

入国警備官の就職先

 入国警備官は全国にある地方入国管理局や空港や港に置かれている出張所や支局、入国管理センターなどに配属されます。
 数年単位で移動をしていろいろな業務を経験するケースが多いようです。
 中には経験を積むために外務省に出向する入国警備官もいるといいます。

入国警備官の平均年収・MAX年収

 入国警備官の年収は配属先や年収によって異なりますが、例として名古屋入国管理局の大卒程度の初任給例は207,805円で、賞与は年2回(4.45ヶ月分/年)となっていますので約470万円となります。
 平均年収だと600万円~700万円程度となっているため、給与の水準は高いのではないでしょうか。

 公安職俸給表(一)によると、最大月収は559,500円となっていますので、年収は920万円以上になると考えられます。
 そこまでたどり着くことができる方は一握りだと考えられますが、日本人の平均年収は400万円という点を踏まえても、初年度から多くもらえる仕事だといえるでしょう。

入国警備官に向いているのはこんな人

 入国警備官は法律に違反している外国人を取り締まり、日本人を守るという大切な仕事をしています。
 警察官などと同じ公安職という点からみても、責任感や正義感、使命感などがなければ業務を行っていくことは困難でしょう。同時に、危険な場面に遭遇することもありますので安全に業務を行うことができる冷静さや立ち向かっていく勇気も必要です。

 さらには外国人を相手にするため語学力やコミュニケーション能力も求められます。
 かなり高い能力を求められる職種だといえるでしょう。

入国警備官に関連する職業や資格

●関連する職業

 入国審査官
  前述しましたが、入国時の審査などを行っているのが入国審査官です。
  外国人が日本に入国する際に、来日目的や滞在期間や荷物のチェックなどを行っています。最近では外国の入国審査の様子が取り上げられたバラエティなどをよく見るので、身近な職業になっているのではないでしょうか。
  滞在期間を超過していたり、違法な物を持ち込む外国人が増加していたりするため、出入国の際のチェックは厳しくなってきています。
  違反調査などでも入国警備官と関わることもあります。

  入国警備官と同じ国家公務員ですが、入国審査官は国家公務員試験を受けることになりますので少し内容が異なります。

●関連する資格

 関連する資格というよりは、入国警備官は語学力が求められます。
 英語の語学力についてはもはや必要不可欠というべきでしょう。
 2018年の入国者数を多い順に見ていくと韓国、中国、台湾の順になっていますので、韓国語や中国語が話せるとよりよいでしょう。
 必ずしも語学力がなければ採用されないというわけではなく、実際に即戦力として語学力を持っていることは求められないようです。その代わり、採用後には充実した語学研修がありますので採用後のフォロー態勢は十分に整っています。

 しかし仕事を覚えながら語学力を磨くのは大変なことですので、学生の間にたくさんの語学力を身につけておいた方がよいのではないでしょうか。

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