歯科技工士になるには
- 2019.12.25
歯科技工士の概要や仕事内容
歯科技工士とは?
歯科技工士は医療系の国家資格の一つで、歯科医師の指示に従って虫歯や歯周病で削ったり事故や病気をしたりといった原因で失ったりしてしまった歯の被せ物や詰め物・入れ歯、歯並びを治すための矯正装置などの「歯科技工物」を作成・加工・修理する、歯科医療技術のスペシャリストです。
歯は食べ物を咀嚼・嚥下(噛み砕くこと・飲み込むこと)だけではなく呼吸や発音の手助け、審美(口元の美しさや顔の形を整えること)の維持などいろいろな役割を果たしてくれます。歯を美しく保つということは生活の質を向上させて、人ひとりの人生を満足させることにまで影響します。
歯科技工士の仕事は人の健康を守るためではなく、幸福の貢献までできる素晴らしいお仕事なのです。
歯科技工士の仕事内容とは?
歯科技工士の主な就職先は歯科技工所(ラボ)や歯科医院などです。
就職先によって少しずつ業務は異なりますが、基本的には歯科技工物の作成です。
就職先ごとの仕事内容と、歯科技工物の種類について詳しくみていきましょう。
●歯科技工所
歯科技工士の多くは歯科技工所に就職します。
歯科技工所は医療機関から歯科技工物の発注を受けてその作成・納品を行います。
●歯科医院
歯科医院の中に「技工室」を設けている歯科医院には歯科技工士が常駐している場合があります。その場合は歯科医師の指示を直接受けて歯科技工物を作成します。
●一般企業
歯科技工物を作成する機械のメーカーや歯科材料のメーカーで機械などの開発に携わったり、大手技工会社の技工所で歯科技工物を作成したりする歯科技工士もいます。イベントなどで実際に機械のデモンストレーションを行うこともあります。
【歯科技工物の種類】
●インレー(詰め物)
虫歯の治療などで使用される金属やセラミック、硬質レジンなどのことを言います。虫歯の部分を削るなどして歯が欠けてしまった部分に詰めて歯の形を整え、機能を補います。歯の一部に空いてしまった穴に金属などを詰めたものをイメージしていただくとわかりやすいかと思います。
●クラウン(被せ物)
いわゆる銀歯のことで、歯全体に被せ物をして欠けたりした歯の形を整え、機能を補います。範囲が狭い場合はインレーで処置をし、広い場合はクラウンで処置をするといった使い分けがされます。
●ブリッジ
失った歯の両隣の歯を支えにして失った歯を補う処置です。
両隣の歯を削って支えにして、橋渡しのような形で義歯を入れる方法です。
ただし、支えとなる歯を削るため、健康な歯に負担をかけてしまう可能性があります。
●部分入れ歯
ブリッジと同じように失った歯を補う処理です。
部分入れ歯の場合はバネ(金属の留め具)やプラスチック素材によってほかの歯と入れ歯を固定します。
金属だと目立つので見た目が気になるという方のために、金属の代わりに肌の色に近い樹脂で作る入れ歯もあります。
●総入れ歯
上あご、または下あごに歯が一本もない場合に人工の義歯を入れて歯の機能を回復させる処置です。
支えとなる歯がないため、精密に口の中の型を取るなどして入れ歯を作成します。
●インプラント
失った歯があったところの骨に、歯根の代わりとなるチタンなどの金属のバネを埋め込み、その上に人工の歯を作る処置です。入れ歯を入れると違和感を抱いたり、食事がおいしく感じられないなどといった訴えをされる方もいらっしゃいますが、インプラントは自分の歯と同じように食事などをすることができます。
また、他の歯に負担をかけずに済みます。
歯科技工士になる方法(資格取得方法等)
歯科技工士は国家試験で、試験を受けるためには受験資格を得なければなりません。
受験資格は、高校卒業後に次の条件を満たす必要があります。
①文部科学大臣の指定した歯科技工士学校または都道府県知事の指定した歯科技工士養成所(大学、短大、専門学校など)を卒業した者(卒業見込みの者を含む)
②歯科医師国家試験または歯科医師国家試験予備試験を受けることができる者
③外国の歯科技工士学校もしくは歯科技工士養成所を卒業した者、または外国で歯科技工士の免許を受けた者
試験合格後は一般財団法人歯科医療振興財団に歯科技工士の免許申請を行います。
免許証が交付されれば、歯科技工士の国家資格を得て名乗ることができるようになります。免許証がなければ国家資格を得たことにはなりません。
資格難易度や試験について
試験について
歯科技工士の国家試験は毎年2月中旬頃行われます。
合格率は90%台後半と高めです。2019年度は95.1%でした。
受験資格を得るために学校に通っていた人が試験を受けるため、合格率が高いのですが、逆に言うときちんと勉強していないと不合格になってしまいます。
●試験の概要
※下記は2020年度の試験の日程です。
受験書類の配布:各学校や養成所に配布されているのでそちらで取得するか、もしくは一般財団法人歯科医療振興財団に郵送で請求し、取得します。
受験書類の受付:2019年12月11日(水曜日)から2019年12月20日(金曜日)までに原則として一般財団法人歯科医療振興財団に郵送(簡易書留)で提出するか、やむを得ない場合は直接提出することになります。
試験日程:2020年2月16日(日曜日)
試験地:北海道、宮城県、東京都、大阪府、福岡県
試験科目:
①学説試験
・歯科理工学
・歯の解剖学
・顎口腔機能学
・有床義歯技工学
・歯冠修復技工学
・矯正歯科技工学
・小児歯科技工学
・関係法規
②実地試験
・歯科技工実技
このうち学説試験は80問/1問1点で出題され、80点満点中48点以上取得で合格(ただし科目別得点のいずれかがその科目の総点数の30%未満がある場合は不合格となります)、実地試験は90点満点中54点以上取得で合格です。学説試験と実地試験の両方の合格基準を満たした者が合格となります。
合格発表:2020年3月26日(木曜日)
今後の歯科技工士の将来性
人の歯は人生の終わりまでずっと使い続けます。
しかし歯には寿命があり大体50~60年ぐらいで抜けてしまうため、70歳前後には歯が抜けていくそうです。
今日本は高齢化社会を迎えており、2018年生まれの日本人の平均寿命は男性が81歳、女性が87歳となっています。もし70歳で歯がたくさん抜けてしまった女性がいて、平均寿命まで生きたとしたら17年間も歯が抜けた状態で過ごすことになりますが、そこまで放っておく人は少ないでしょう。
つまり、この高齢化社会が進んでいる現代、歯科技工士のニーズはあり続ける可能性が高いということになります。
また、インプラントや審美目的の歯列矯正など、歯科技工士の高度な技術を必要とする施術を受けたい人も増えています。
日本の歯科技工士の技術は世界でも認められているため、海外から日本の歯科医院に施術を受けにくる方もいらっしゃるほどだそうです。逆に海外で就職して活躍される方もいらっしゃいます。
これらのことから、歯科技工士の将来性は十分にあると予想されます。
歯科技工士の就職先
主な就職先は前述したとおりですが、他にもどのような就職先があるのかチェックしておきましょう。
・歯科技工所(ラボ)
・歯科医院
・審美歯科
・矯正歯科
・総合病院
・歯科器メーカー
・教育機関
・独立開業
歯科技工士に向いているのはこんな人
歯科技工士は人が生活していくうえで必要不可欠な歯を作る仕事です。
歯を作る際には緻密な調整が必要で、削りすぎたりして形が整わないと、患者さんの歯の健康に影響を与えてしまいます。
そのため、手先が器用で正確な仕事ができること、集中して作業ができることなどが必須条件ともいえます。
また、歯科技工士の主な就職先は歯科技工所なのですが、歯科技工所では受注した歯を作成することになりますので、直接患者さんと触れ合うことなく緻密な作業をひたすら続けていくことになります。工場で黙々と働き続けるという感覚に近いそうです。そういった環境に耐えられることも求められます。
そして、医療関係者である以上歯科医師や歯科衛生士などとチームで患者さんの治療を行っていくことになりますので、コミュニケーション能力が高いことや、日々進歩していく医療技術や知識を修得し続ける向上心なども求められます。
歯科技工士に関連する職業や資格
関連する職業
歯科医院に就職した場合は歯科医師をはじめ歯科衛生士、受付、歯科助手などと連携して患者さんの治療を行っていきます。患者さんにかかわる医療関係者とは必ずかかわっていくことになります。
関連する資格
歯科衛生士の資格をダブル取得することで、両方のスキルを生かして患者さんの治療を行うことができることや、就職に有利になります。
実際に歯科衛生士養成所などでもダブル取得を勧めている学校などもあります。
この先高齢者が増加し、歯科医院に通うことが難しい方のために訪問診療を行う歯科医院も増えていくことが考えられますので、訪問診療に対応するためにも取得しておいてよい資格だと言えるでしょう。
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