裁判所事務官になるには

  • 2020.01.29
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裁判所事務官の概要や仕事内容

裁判所事務官とは?

裁判所職員は
・裁判官(最高裁判所長官、最高裁判所判事、高等裁判所長官、判事、判事補、簡易裁判所判事)
・裁判官以外の職員(裁判所調査官、裁判所事務官、裁判所書記官、裁判所技官、家庭裁判所調査官など)
に分けられます。裁判所事務官は「裁判官以外の職員」のうちのひとつで、最高裁判所から簡易裁判所までの各裁判所に置かれ、裁判所の事務を行います(裁判所法第58条)。
裁判所事務官は国家公務員で、裁判所職員採用試験に合格しなければなりません。

裁判所事務官の仕事内容とは?

裁判所の組織は「裁判部門」と「司法行政部門」に分けられています。
裁判所事務官はそれぞれの組織に属して業務を行っています。

●裁判部門
裁判部門に属した場合、各事件の裁判を支える役目を果たします。
例えば裁判部門は「民事部」「刑事部」など裁判を扱う部署ごとに分けられます。
そしてその部署ごとに裁判官、裁判所書記官、裁判所事務官(家庭裁判所はさらに家庭裁判所調査官)が配置されます。
裁判所事務官は裁判所書記官の仕事を補助し、裁判がスムーズに行われるように事務手続きを行います。
具体的な内容としては弁護士などが窓口に持参した書類や郵送・FAXなどで送られてくる書類などを受け付けて書記官に引き継いだり、書類の発送(裁判期日の呼出状、判決書など)をしたり、弁護士と打ち合わせをしたりと、裁判を進行するための様々な作業があります。

裁判の進行以外の作業としては毎月の統計資料の作成や法廷の準備、入廷前の事件番号の読み上げ、裁判員に関する手続きなども行います。
このようにさまざまな業務を行うためには法律の知識がなければなりません。
そのため試験科目には憲法や民法、刑法といった法律の専門試験種目があります。

●司法行政部門
裁判所一般企業と同じような一つの大きな組織です。その組織を運営していくために裁判所にも総務課や人事課、会計課などの事務局が設置されています。
司法行政部門に属する裁判所事務官は、それぞれの課などで業務を行います。
例えば物品の調達、採用手続き、人事異動、給与事務、年末調整、出張費の清算といった普通の事務から、傍聴券の交付や保釈金の取り扱い、裁判所の広報活動といった裁判所ならではの事務まで幅広く業務を行います。

裁判所事務官になる方法(資格取得方法等)

前述したとおり、裁判所事務官になるには裁判所職員採用試験を受験し、合格しなければなりません。
裁判所事務官採用試験には「総合職」と「一般職」があり、総合職試験には「院卒者区分」と「大卒程度区分」が、一般職試験には「大卒程度区分」と「高卒程度区分」があります。

それぞれ受験資格がありますので確認しておきましょう。
※以下は2019年の受験資格です。
●総合職試験・院卒者区分
1989年4月2日以降に生まれた者で次に掲げるもの
(1)大学院の修士課程又は専門職大学院の課程を修了した者及び2020年3月までに大学院の修士課程又は専門職大学院の課程を修了する見込みの者
(2)最高裁判所が(1)に掲げる者と同等の資格があると認める者

●総合職試験・大卒程度区分
(1)1989年4月2日から1998年4月1日までに生まれた者
(2)1998年4月2日以降に生まれた者で次に掲げるもの
ア 大学を卒業した者及び2020年3月までに大学を卒業する見込みの者
イ 最高裁判所がアに掲げる者と同等の資格があると認める者

●一般職試験・大卒程度区分
(1)1989年4月2日から1998年4月1日までに生まれた者
(2)1998年4月2日以降に生まれた者で次に掲げるもの
ア 大学を卒業した者及び2020年3月までに大学を卒業する見込みの者並びに最高裁判所がこれらの者と同等の資格があると認める者
イ 短期大学又は高等専門学校を卒業した者及び2020年3月までに短期大学又は高等専門学校を卒業する見込みの者並びに最高裁判所がこれらの者と同等の資格があると認める者

●一般職試験・高卒程度区分
(1)2019年4月1日において高等学校又は中等教育学校を卒業した日の翌日から起算して2年を経過していない者及び
2020年3月までに高等学校又は中等教育学校を卒業する見込みの者
(2) 最高裁が(1)に掲げる者に準ずると認める者

採用予定がある場合は一般職試験・社会人区分として20歳以上40歳未満(高卒者区分の受験資格を有する者を除く)の方も受験することができる可能性があります。

資格難易度や試験について

試験について

参考までに、裁判所事務官の試験のうち一番採用人数が多い一般職試験・大卒程度区分の試験についてみていきましょう。
合格率は例年10%前後となっています。かなり難易度が高い試験となっています。(ちなみに他の3つの試験は一桁台で、もっと難易度が高くなっています。)

●試験の概要
※下記は2019年度の試験の日程です。
受験書類の配布:インターネット申し込みが原則となっています。

受験書類の受付:インターネット申込(原則)
4月1日(月)~4月9日(火) 受信有効
インターネット申込専用アドレスにアクセスし、事前登録と申込受付の二段階の手続きを行います。

郵送申込(インターネット申込ができない場合に限る)
4月1日(月)~4月3日(水) 4月3日消印有効
受験申込書を記入し、受験を希望する第1次試験地にある裁判所あてに簡易書留で郵送します。

試験日程:【第一次試験】5月11日(土)
【第二次試験】6月11日(火)~7月8日(月)
このうち人物試験受験票で指定する日。

試験地:第一次・二次試験ともに
《東京高等裁判所》東京都、横浜市、さいたま市、千葉市、前橋市、静岡市、甲府市、新潟市
《大阪高等裁判所》大阪市、京都市、神戸市
《名古屋高等裁判所》名古屋市、津市、金沢市、富山市
《広島高等裁判所》広島市、山口市、岡山市、鳥取市、松江市
《福岡高等裁判所》福岡市、長崎市、大分市、熊本市、鹿児島市、宮崎市、那覇市
《仙台高等裁判所》仙台市、福島市、盛岡市、青森市
《札幌高等裁判所》札幌市、函館市、釧路市
《高松高等裁判所》高松市、高知市、松山市

一次試験及び二次試験の筆記試験は、希望する勤務地に関係なく全国から受験に有利な会場を選ぶことができます。
二次試験の受験会場は希望する勤務地を管轄する高等裁判所の管区内から試験地を選択することになります。ただし、一次試験で同じ管区内の別の試験地を選んでいる場合は別の試験地を選択することはできません(例えば一次試験をさいたま市で受けたが希望する勤務地は東京都だったという場合、二次試験の試験地はさいたま市になります)。

試験科目:
【第一次試験】
基礎能力試験…公務員として必要な基礎的な能力についての筆記試験
知能分野 27題
知識分野 13題

専門試験…裁判所事務官に必要な専門的知識などについての筆記試験
必須 憲法7題、民法13題
選択 刑法または経済理論10題(試験当日に問題を見て選択することができます)

【第二次試験】
論文試験…文章による表現力、課題に対する理解力についての筆記試験
1題 ※第一次試験日に実施します。

専門試験…裁判所事務官に必要な専門的知識などについての筆記試験
憲法1題 ※第一次試験日に実施します。六法使用不可。

人物試験…人柄、資質、能力などについての個別面接

合格発表:【第一次試験】5月30日(木)
【最終合格発表】8月2日(金)

今後の裁判所事務官の将来性

裁判員裁判などによって、裁判はより身近なものになってきています。
また、芸能人の裁判などで注目される裁判がメディアで取り上げられるなど、裁判は遠い存在ではなくなっているのです。
そうした中で裁判所事務官が果たす役割として広報活動が重要になってきています。

裁判員制度について理解をしてもらうことやマスコミ対応といったコミュニケーション能力が求められてきています。
特に裁判員制度が導入されてからは裁判所事務官の作業量は増えていることなどから、特にコミュニケーション能力の高い裁判所事務官の需要はまだまだ見込めると考えられます。

裁判所事務官として一定期間勤務した者は、裁判所職員総合研修所の裁判所書記官養成課程入所試験に合格し,所定の期間,研修を受けることで裁判所書記官になることができます。裁判所書記官は内部試験の合格や推進委員会の推薦によって簡易裁判所判事になることも可能です。

さらに、裁判所事務官として10年以上職務に従事したのち法務大臣の認可を受ければ司法書士の資格も取得することができます。
このようにスキルアップも見込めることからも、十分に将来性があると考えられます。

裁判所事務官に向いているのはこんな人

・法律についての知識がある人
・常に法律について学ぶことができる人
・責任感がある人
・コミュニケーション能力が高い人
・思いやりがある人
・正確に作業をこなせる人

などが挙げられます。
裁判所事務官の仕事はミスが許されない仕事ですので、法律の知識があることはもちろん、責任感を持って正確にこなせること、裁判所に出頭してくる人に接する際の思いやりを持っているなどということが求められるのです。

裁判所事務官に関連する職業や資格

関連する職業

●裁判所書記官
裁判所書記官は裁判所において、裁判記録や調書(口頭弁論調書、公判調書など)などの作成・保管などを行う裁判所職員です。
ほかにも裁判官の補佐や、裁判の関係人に連絡を取るなど、裁判官と裁判当事者のパイプ役としても活躍します。

●司法書士
不動産登記や法人登記、裁判所などに提出する書類の作成、法律相談などを行います。人々の権利を守り、平等な社会の実現をすることを目的としています。

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