臨床工学技士になるには
- 2019.12.25
臨床工学技士の概要や仕事内容
臨床工学技士とは?
臨床工学技士は1987年に制定された比較的新しい制度で、今や医療には不可欠となった医療機器の操作や安全確保や保守点検といったメンテナンスなどを行うスペシャリストです。
医療現場では医師や看護師、臨床検査技師など、他のメディカルスタッフとチームで仕事を行います。人工呼吸器や人工心肺装置、血液浄化装置といった生命維持装置などを行っていくため、現代医療には欠かせない存在です。
臨床工学技士の仕事内容とは?
臨床工学技士の仕事内容は勤務先によって異なりますが、多くの方は病院やクリニックなどの医療機関に就職されるそうですので、医療機関で行われている仕事内容をメインにチェックしていきたいと思います。
●呼吸治療業務
呼吸が十分にできない状態になった患者さんなどに人工呼吸器を装着する際に、装置が安全に使用されているか、異常がないかなどのチェックを行います。
人工呼吸器の管理やメンテナンスも行っています。
●人工心肺業務
心臓手術を行う場合、心臓を止めて手術を行うことがあります。
その際に心臓や肺の機能を人工心肺(体外循環装置)で補助することになります。この人工心肺の操作や管理を行うのも臨床工学技士の仕事です。
多い時には数十台の医療機器を使うことがありますが、その機器の使用前の点検や操作は全て臨床工学技士が行います。
●血液浄化業務
血液浄化は血液を綺麗にすること(血液中に溜まってしまった老廃物や代謝産物を取り除くなど)によって病気の改善や生命の維持をする治療のことを言います。
代表的なものと言えば糖尿病を患っている方の腎機能を代替する「血液透析療法」ですが、他にも血漿中に存在する病因関連物質などを除去することによって病態を改善させる「血漿交換療法」、血液を血漿と血球に分離させて吸着機に通して選択的に病因物質を除去する「血液吸着療法」など、様々な治療法があります。
臨床工学技士は、例えば血液透析であれば人工透析装置を患者さんの体に穿刺(簡単に言うと注射針を刺すことで、臨床工学技士の場合はルート確保をすることなど)をしたり、装置の操作を行ったりします。
●心血管カテーテル業務
カテーテル検査とは心臓の血管を診断・治療をするための検査方法で、この検査によって手術に適応するか、どのような術式で手術を行うかなどを決定するため、非常に重要な検査となっています。
臨床工学技士は治療装置の準備や検査の記録をとるためのコンピューター操作などを行います。
場合によっては補助循環装置やペースメーカーなどの装置を操作することもあります。
●高圧酸素治療業務
高圧酸素治療業務とは、体通常の二倍以上の圧力をかけたタンクの中で酸素を吸入してもらうことによって、通常の10倍~20倍の酸素を血液中に取り込むことができます。体中に酸素を行きわたらせることができるこの治療は様々な治療に使われます。臨床工学技士はこの機械の操作や管理を行います。
●ペースメーカー・IOC業務
不整脈の患者さんにはペースメーカーや植え込み型除細動器といった機器を体内に植え込む手術が行われます。このような機器を取り扱う際に機器の操作や管理も行います。
このように手術室、集中治療室、病室…など様々な場面で臨床工学技士が医療機器の管理運用に活躍しています。
臨床工学技士になる方法(資格取得方法等)
臨床工学技士になるためには、高校を卒業して受験資格を得て、国家試験に合格し、厚生労働省医政局医事課試験免許室免許登録係にオンラインまたは郵送で免許申請を行わなければなりません。
まずは、以下の条件を満たすことで受験資格を得ることができます。
・4年制大学(臨床工学科、医用電子工学科、医用生体工学科など)を卒業すること(見込みも含む)
・3年制の短大または3~4年の専門学校(臨床工学科)を卒業すること(見込みも含む)
・医療系国家資格養成所(看護師や臨床検査技師など)や大学、短大などで1年(高等専門学校は4年)以上修業して厚生労働大臣の指定する科目を修めたうえ、臨床工学技士養成所で1~2年学び、卒業すること(見込みも含む)
専門学校を卒業することが一番の近道ですので、早く臨床工学技士として働きたいという明確な目標を持っている場合は専門学校などに進学すると良いでしょう。
臨床工学技士になれる専門学校はこちら資格難易度や試験について
試験について
臨床工学技士の国家試験は毎年3月上旬ごろに行われます。
合格率は約80%前後で推移していますが、再受験をした場合は50%程度に落ちると言われています。そのため在学中にしっかりと勉強をして、一回で合格できるように努力したほうが良いと考えられます。
参考までに2019年の受験者数は2,828名で、合格者数は2,193名、合格率は77.5%でした。
きちんと専門の学校などを卒業したうえで試験を受けるにもかかわらず合格率が80%しかないところをみると、難易度は高めだと言えるでしょう。
●試験の概要
受験書類の配布:各学校などで配布しています。
受験書類の受付:2019年12月12日(木曜日)から2020年1月6日(月曜日)までに公益財団法人医療機器センターに郵送(簡易書留)または直接持参し提出する。
試験日程:2020年3月1日(日曜日)
試験地:北海道、東京都、大阪府、福岡県
試験科目:医学概論
(公衆衛生学、人の構造及び機能、病理学概論及び関係法規を含む。)
臨床医学総論
(臨床生理学、臨床生化学、臨床免疫学及び臨床薬理学を含む。)
医用電気電子工学(情報処理工学を含む。)
医用機械工学
生体物性材料工学
生体機能代行装置学
医用治療機器学
生体計測装置学
医用機器安全管理学
この中から180問出題され、60%ほどの正解率が合格ラインだとされていますので108問以上正解すれば合格すると考えられます。
合格発表:2020年3月26日(木曜日)
今後の臨床工学技士の将来性
日々技術は進歩し、医療機器は高度化されています。
これからも進歩していくことは間違いないと思われますし、医療機器の保守点検の義務化も進められています。このことから医療機器を取り扱うことができる臨床工学技士はこれからも需要が高まっていくと考えられます。
また、人工透析患者について臨床工学技士の数が足りないというデータもありますので、今現在の需要もかなり高いと思われます。
現在も未来も需要があると考えられる臨床工学技士は、しっかりと将来性があると言ってもよいでしょう。
臨床工学技士の就職先
臨床工学技士の主な就職先は医療機関です。具体的には
・国立病院、市立病院などの公立病院
・大学病院
・民間の病院
・透析クリニック
・診療所
などが挙げられます。ほとんどの方はこういった医療機関に就職するということですが、他にも
・医療機器メーカー
・臨床工学技士養成校(教職員)
・眼科や美容整形外科
などで活躍する臨床工学技士の方もいらっしゃいます。
よくある求人内容としては、手術室において人工心肺業務や人工透析などの透析業務、人工呼吸器などの取り付け業務、医療機器全般の管理や修理などの業務を行う臨床工学技士の求人となっています。
臨床工学技士に向いているのはこんな人
臨床工学技士は、医療だけでなく工学のどちらにも専門的な知識が求められます。
どちらも日々研究や開発がすすめられていますので、常に興味を持って学び続けることができる人であることが求められます。
また、臨床工学技士の仕事は人命を左右する責任が大きい仕事です。責任感があり、人を助けたいという強い意志を持った人であることが望まれます。同時に機器は不具合を生じることもありますので、そういったアクシデントが起こった際も落ち着いて対処しミスを起こさないようにするという冷静さ、細かさも重要です。
ほかにも長時間の手術に耐えられる体力・集中力や、チームで仕事を行うためのコミュニケーション能力も求められます。
臨床工学技士に関連する職業や資格
関連する職業
前述したとおり臨床工学技士はチームの一員として仕事を行いますので、医師をはじめ看護師や臨床検査技師など多くのメディカルスタッフと関わっていくことになります。
関連する資格
臨床工学技士の資格を取得している方はスキルアップとして様々な専門認定資格を取得することができます。
専門臨床工学技士
- 血液浄化専門臨床工学技士
- 不整脈治療専門臨床工学技士
- 呼吸治療専門臨床工学技士
- 高気圧酸素治療専門臨床工学技士
- 手術関連専門臨床工学技士
各関連学会による認定資格
- 透析技術認定士
- 体外循環技術認定士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 臨床ME専門認定士
- 日本アフェレシス学会認定技士
- 臨床高気圧酸素治療装置操作技師
- 医療情報技師
- 消化器内視鏡技師
- 透析技能検定
- 心血管カテーテルインターベンション技師
- MDIC
実際の医療現場の臨床工学技士の方もこれらスキルアップの資格を取得している方が多くいらっしゃいます。学び続ける楽しさがあるのも臨床工学技士の魅力の一つかもしれませんね。
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