アクチュアリーになるには

  • 2020.02.28
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アクチュアリーの概要や仕事内容

アクチュアリーとは?

アクチュアリーというのは保険数理に関する専門家のことを言います。

聞き慣れないアクチュアリーという職業ですが歴史は古く、17世紀にイギリスで始まった職業だそうです。
元々は組合員から一定額を集めて万が一のことがあった場合に遺族に支払うという制度があったのですが、毎月の掛け金が上昇してしまったために制度が破綻してしまいました。そのため、掛け金は一定金額ではなく加入者の年齢や加入年数によって掛け金や保険金を変動させるという生命保険のシステムが生まれました。
そこで誕生したのが数理統計学を用いて掛け金や支払う保険金を算定する専門家である「アクチュアリー」です。

数理統計学というのは、母集団から抽出した標本から確率論を応用して母集団の状態を推計するなどして、全体的な規則性を求める技法…だそうです。
ちょっとわかりにくいですが、アクチュアリーの仕事には必要不可欠な技法で、数理統計学を元に死亡率や事故発生率の計算、保険料の算出、年金計算などの業務を行っています。

アクチュアリーの仕事内容とは?

アクチュアリーは生命保険や損害保険などの保険の分野や年金の分野です。
  
  保険の分野では、適切な保険料の算定や将来支払う保険金や給付金に備える準備金の評価、会社全体の収支の分析などを行っています。
  特に生命保険は数十年に及ぶ長期の契約です。数十年後、加入者に確実に保険金を支払うためには常に収支のバランスを保っておかなければなりません。
 人がいつ病気になるか、いつ事故に遭うか、いつこの世を去るか…というのは誰にもわからない不確定な要素です。そこでアクチュアリーは数理統計学を利用して病気の罹患率や事故率、死亡率など将来起こるであろうことの発生確率の分析を行い、保険商品の開発や掛け金の算定を行っています。

 年金の分野では主に企業年金の制度の取り扱いを行います。
 企業年金は企業ごとに従業員を対象に行っている年金制度です。企業年金を実施する際にはアクチュアリーが掛け金などを算出します。実施後も定期的に掛け金などの見直しを行います。

アクチュアリーになる方法(資格取得方法等)

 日本で言うアクチュアリーというのは一般的に「公益社団法人日本アクチュアリー会」に所属する正会員のことを指します。
 所属していなくてもアクチュアリーの仕事をしていればアクチュアリーと呼ぶこともあります。
 日本アクチュアリー会の正会員になるためには、同会が主催する資格試験の全種目に合格する必要があります。

 先ほどアクチュアリーの歴史は古いというお話をしましたが、日本アクチュアリー会も明治32年創立で、昭和11年から正会員資格試験が始まっています。実は日本でも歴史のある職業だったのですね。

 では、アクチュアリー会の正会員になるにはどういった流れになるのかチェックしていきましょう。
  ①第1次試験(基礎科目)5科目全てに合格する⇒準会員となる
              ※1~4科目に合格した場合は研究会員となります。
  ②第2次試験(専門科目)2科目に合格する
  ③プロフェッショナリズム研修(初期教育)を受講する⇒正会員となる
  
 このように、第1次試験と第2次試験の計7科目すべてに合格をすることで、アクチュアリー会の正会員になることができます。
 年一回の試験で、両方の試験を受けることはできないため最短でも正会員になるためには2年かかります。

【受験資格】
 アクチュアリー資格試験には受験資格があります。
 要件は以下の通りとなっています。

(1)第1次試験
学校教育法による大学(短期大学を含む)を卒業した方が受験できます。
このほか、次の要件等を満たす方で、所定の書類を提出(※)し、試験委員会が大学を卒業した方と同等の資格試験受験に必要な基礎的学力を有すると判断した方も受験できます。
①大学3年生以上の者(4年制大学において、休学期間を除き2年以上在学し、かつ62単位以上の単位を修得した者)
②高等専門学校卒業者
③学士資格を有しない大学院生
④外国の大学を卒業した者、または、外国において上記①~③に相当する学校教育における課程を修了した者
⑤生保数理、損保数理、年金数理等の日本アクチュアリー会資格試験の受験科目に関連する知識を必要とする、保険・年金などの業務に3年以上携わった者

※提出書類は該当要件によって異なります。 また、状況によっては、所定の提出書類の一部または全部を省略することがあります。

(2)第2次試験
第1次試験の全科目(5科目)に合格した日本アクチュアリー会の準会員が受験できます。

資格難易度や試験について

試験について

 では、具体的な試験の内容についてチェックしていきましょう。

 ●試験の概要
 ※下記は2019年の試験の日程です。
  受験書類の受付:2019年7月3日(水)~ 8月22日(木)

  試験日程:2019年12月9日(月) …数学
12月10日(火)…損保数理、生保1・損保1・年金1
生保数理
12月11日(水)…年金数理、生保2・損保2・年金2                    会計・経済・投資理論

  試験地:東京…TOC五反田
大阪…天満研修センター

  試験科目:(1)第1次試験
第1次試験は第2次試験を受けるに相当な基礎的知識を有するかどうかを判定することを目的としています。 試験科目は「数学」「生保数理」「損保数理」「年金数理」および「会計・経済・投資理論」の5科目で、この中から受験科目を受験者が選択します。

(2)第2次試験
第2次試験は、アクチュアリーとしての実務を行う上で必要な専門的知識および問題解決能力を有するかどうかを判定することを目的としています。 「生保コース」「損保コース」および「年金コース」のうちいずれか1つのコースを受験者が選択します。

試験科目は、生保コースでは「生保1」および「生保2」、損保コースでは「損保1」および「損保2」、年金コースでは「年金1」および「年金2」の2科目で、受験科目は受験者が選択します。

●合格ライン
(1)第1次試験
「数学」、「生保数理」、「損保数理」、「年金数理」、「会計・経済・投資理論」については、合格基準点(各科目の満点の60%を基準として試験委員会が相当と認めた得点)以上の得点の者を合格とします。

ただし、「会計・経済・投資理論」については、「会計」、「経済」、「投資理論」の各分野のうち一分野でも最低ライン(分野ごとの満点の40%を基準として試験委員会が相当と認めた得点)に達していない場合は、不合格とします。

(2)第2次試験
「生保1」、「生保2」、「損保1」、「損保2」、「年金1」、「年金2」については、合格基準点(各科目の満点の60%を基準として試験委員会が相当と認めた得点)以上の得点の者を合格とします。

ただし、第Ⅰ部、第Ⅱ部のいずれかでも最低ライン(第Ⅰ部は満点の60%、第Ⅱ部は満点の40%を基準として試験委員会が相当と認めた得点)に達していない場合は、不合格とします。

 合格発表:2020年2月中旬の予定
 

今後のアクチュアリーの将来性

 数理業務の専門的な知識を持っているため重宝されるアクチュアリーですが、2019年3月度のアクチュアリー会の正会員数は1,762人(研究会員などを含めると5,170人)であると発表されていることからわかるように、決して会員数は多くありません。
 しかし実際の求人を見たところ「アクチュアリー会の正会員」や「アクチュアリー会の2科目以上取得していること」といった雇用条件を設定している会社が多くあることがわかりました。
 
 専門知識を必要とする企業が多いこと、会員数が少ないことなどから就職先に困る可能性が少ないと考えられます。同時に希少価値であることから給与や待遇が良い企業が多いのも特徴です。

 これからAI化が進むのでアクチュアリーの仕事もなくなるのではあという予測もあるようですが、アクチュアリーの場合はAIをうまく使いこなしてより良い数字を出すことや、その数字などについて相談に乗り解決策を示す…つまりコンサルティングを行うことです。特にコンサルティングはAIではなく人間が行うため、仕事がなくなるとは考えにくいです。
 AIを使いこなし、豊富な知識でコンサルティングを行えるアクチュアリー会の会員であれば、これからも十分な将来性があると言えるでしょう。

アクチュアリーの就職先

 アクチュアリーの主な就職先には次のようなものがあります。
  ・保険会社
  ・金融機関
  ・コンサルティング会社
 
 このうち多くは保険会社や金融機関となっています。
 資格取得までにはかなりの時間を要しますので、中には「アクチュアリー候補生」として採用している会社もあります。
 ただし選ばれるのはすでに1つでも科目をとっている人や有名大学の人などの一部の人となっています。

アクチュアリーの平均年収・MAX年収

 前述しましたがアクチュアリーは年収が高い就職先が多いです。
 年収の平均は約600~1,200万円となっています。
 高年収の人はアクチュアリー会の準会員や正会員の資格を持っている人です。

 中には保険の外資系の企業に就職している人で年収2,000万円という方もいらっしゃるので、高い年収を得るためには外資系企業を目指すというのも良いのではないでしょうか。ただしこの場合は英語力も必須となります。

アクチュアリーに向いているのはこんな人

 アクチュアリーの仕事は常に膨大な数字やデータに向き合う仕事です。
 計算方法も一つではありませんし、アクチュアリーが行う計算には正解がありませんので、情報を元に適切な正解を見つけていかなければなりません。
 そのため、数字に強いことはもちろん根気強く数字に向き合う力も必要です。
 
 また、仕事の性質上保険業法などの法律も熟知しておかなければなりません。
 法律は改正されますし、社会の状況も日々変わっていきますので、常に様々な知識を取り入れ更新していくことができなければ適切な数字を出すことは難しいでしょう。

 アクチュアリーが扱う数字は人の生活に関わるものです。
 常に学び、適切な正解を見つけ、責任感を持って数字に向き合える人がアクチュアリーに向いているでしょう。

アクチュアリーに関連する職業や資格

関連する資格

 TOEIC
 前述したとおり外資系企業で活躍するためには英語力が必須です。
 外資系企業でなくても、海外のアクチュアリーと仕事をする機会もありますので、アクチュアリーとして活躍するには英語力をつけておく必要があるでしょう。
 そこで取得しておきたい資格と言えば誰もが知っているTOEICです。
 実際に求人要件として「TOEIC○○点以上」と設定している会社もあります。少なくても500点、多いところは700点以上となっています。
 就職したい企業の求人要件はよくチェックしておきましょう!

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