ふぐ調理師になるには
- 2020.07.21
ふぐ調理師の概要や仕事内容
ふぐ調理師とは
ふぐ調理師とは、飲食店や加工会社など、ふぐ料理やふぐ製品を提供する店舗において、ふぐを捌き調理を行う職業です。
日本食によく用いられるふぐですが、その体内には有毒部位があります。この毒はテトロドトキシンと呼ばれるもので、人を死に至らしめることもある猛毒。実際に、ふぐ毒による事故はこれまでに多数起こっています。そのため、ふぐの取り扱いには専門的な知識と細心の注意が必要なのです。
このような危険があるため、都道府県のふぐ条例により、ふぐを捌くためには「ふぐ調理師」免許の保有が義務付けられており、ふぐの捌き方や猛毒部位の適切な処理などが求められています。ふぐ調理師とは、この「ふぐ調理師」免許を保有している者が名乗れる職名であり、ふぐを扱う専門家として飲食業界で活躍を見せています。
また、ふぐ調理師は、「ふぐ包丁師」「ふぐ取扱者」「ふぐ処理師」「ふぐ調理士」「ふぐ取扱登録者」「ふぐ調理者」などと呼ばれることもあります。
ふぐ調理師の仕事内容とは
ふぐ調理師の主な仕事は、ふぐを捌き、調理することです。その中でも、ふぐの皮を引いたり内臓を取り分け除毒を行ったりする工程である「身欠き」と呼ばれる作業は、「ふぐ調理師」免許保有者のみに許されています。ふぐを捌く工程はいくつもありますが、ふぐ調理師はそのひとつひとつを丁寧にこなしてふぐを食べられる状態に捌き、さまざまな料理へと調理していきます。
また、ふぐ調理師にとって重要な仕事のひとつに、ふぐを捌いた後の有毒部分の処理があります。取り除いた有毒部位については、専用の容器に入れて鍵をかけ管理し、専門業者に処理を委託しなければならないと定められています。この仕事を怠れば事故が起こる可能性もあるので、ふぐ調理師は後処理もきちんと行わなければなりません。
さらに、「ふぐ調理師」免許を保有している板前やすし職人であれば、ふぐ料理以外の調理も手掛けます。
ふぐ調理師になれる専門学校はこちら
ふぐ調理師になる方法
ふぐ調理師になるためには、国家資格である「調理師」免許に加え、都道府県が認定する「ふぐ調理師」免許が必要です。これらの免許を取得し、ふぐ料理を扱う飲食店や旅館に調理担当として就職できれば、ふぐ調理師として働けます。
とはいえ、実際に働くとなると、ふぐ料理だけの調理を行うというわけにはいかず、ふぐ料理以外のさまざまな調理も行うことになるでしょう。そして、そのためにはあらゆる調理の知識や技術が必要になります。
また、「調理師」免許取得のためには実務経験もしくは学歴が条件として定められており、「ふぐ調理師」免許取得にも実務経験が条件として定められています。
よって、ふぐ調理師を目指すには、調理系の専門学校に通ったり飲食店で修行を積んだりと、免許取得や技術習得のための過程が必要になるでしょう。
ふぐ調理師になれる専門学校はこちら
ふぐ調理師に求められる資格や試験
先述のように、ふぐ調理師には、「調理師」免許の他に「ふぐ調理師」免許の取得が求められます。この免許は都道府県ごとに定められているもので、免許の名前や取得の条件は都道府県ごとに異なります。
また、その内容はふぐの取り扱いに関する法規やふぐに関する知識、毒性の鑑別、その処理技術などで構成されており、学科試験とともに実物のふぐを目の前にした実技試験も行われます。そして、これに合格し、都道府県に登録すれば、「ふぐ調理師」免許を取得できます。
ただし、この試験を受けるためには以下の2つの受験資格を満たす必要があります。
「ふぐ調理師」免許試験 受験資格
①調理師免許を保有している者
② ふぐ調理師の資格保有者の下で、ふぐを取り扱う業務に2年以上従事した者
※東京都の場合
このような条件は、都道府県によって異なります。例えば、ふぐの名産地である山口県では、受験条件となる実務経験を3年以上と厳しく定めています。試験内容も大きく異なるので、受験を検討する場合には事前によく確認しておきましょう。
ふぐ調理師になれる専門学校はこちら
難易度や試験について
ここでは、「ふぐ調理師」免許の試験について見ていきましょう。
「ふぐ調理師」免許試験の正確な合格率は不明ですが、概ね60%程度になるようです。内容はかなり専門的ですが、受験資格が厳しく定められているため、受験者の合格率はさほど低くはないようです。
試験の詳細は、以下の表をご覧ください。
受験日程 | 9月 |
受験料 | 15,900円(税込) |
試験会場 | 学校法人後藤学園 |
試験形式 | 学科試験(マークシート)/実技試験(鑑別、調理) |
試験時間 | 90分/23分(鑑別3分、調理20分) |
受験資格 | 東京都福祉保健局HPの詳細をご確認ください。
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/smph/kenkou/shikaku/csh_menkyo/hugu/huguh15.html |
合格条件 | 不明 |
※2020年、東京都の場合。都道府県によって大きく異なります。
ふぐ調理師になれる専門学校はこちら
今後のふぐ調理師の将来性
ふぐは日本食の中でも冬の風物詩として知られる食材で、多くの人が鍋やすしでその味を楽しんでいます。そのため、多数の日本料理店やすし店がふぐを取り扱っていますが、これを捌くのは「ふぐ調理師」免許を持った人間でなければならないと法律および条例で定められています。つまり、ふぐを扱う飲食店では、必ずふぐ調理師が必要とされるのです。
このような法律や条例が定められている上、将来ふぐ料理が食べられなくなることはないと予想されるため、今後もふぐ調理師の仕事はなくなることはないでしょう。
ただし、ふぐを捌く技術だけでは、飲食業界で活躍しにくいのも事実です。ふぐ以外の調理に関する技術や知識にも長けていれば、板前やすし職人として広く働けるでしょう。ふぐの調理に関わる仕事を長く続けるためには、ふぐの捌きはもちろん、調理全般の腕を磨く努力も必要です。
ふぐ調理師になれる専門学校はこちら
ふぐ調理師の就職先
ふぐ調理師の主な就職先は、ふぐ料理を扱う日本料理店や寿司屋、ふぐ料理の専門店、旅館などです。このような店での板前や職人の求人は一定数あり、ふぐ調理師免許を持っていれば就職は比較的しやすいでしょう。とはいえ、日本料理店や寿司屋に就職してすぐにふぐを捌けることは少なく、多くの場合、最初は見習いから始めることになります。実際にふぐを捌くのは、現場でのノウハウを身に付けてからになるでしょう。
また、加工会社、水産会社なども、ふぐ調理師の就職先のひとつ。この場合、加工したり販売店に卸したりするために、ふぐを捌きます。
また、既存店に就職するのではなく、ふぐを扱う飲食店を自身で開業するのもひとつの方法です。しかし、実務の経験を積んでおかなくては店をうまく運営することは困難です。そのため、開業するためにはまず既存店に就職し、十分な経験を積んでから独立するのが理想でしょう。
ふぐ調理師になれる専門学校はこちら
ふぐ調理師の平均年収・MAX年収
ふぐ調理師に限定した年収の情報は少なく、平均年収を挙げることはできません。
そこで、ふぐを扱うことも多いすし職人や板前の年収を見てみると、その平均年収は300万円〜400万円ほどになるようです。恐らく、ふぐ調理師の年収も同様程度になると考えられます。この年収は、日本全体で見ると平均を切っており、水準が高くはありません。
ただし、年収は勤務先の規模や勤続年数などによっても大きく変わります。規模の大きな店や高級店に勤務している場合には、平均を大きく超える年収を手にすることもあるでしょう。
ふぐ調理師に向いているのはこんな人
ふぐ調理師は、毒のあるふぐをただ捌くだけではなく、捌いた後の有毒部分の処理まで行わなくてはなりません。ふぐに含まれる毒は猛毒で、誤って口にすれば死に至る恐れもある恐ろしいもの。きちんと定められた方法で捌き、処理しなければ思わぬ事故を引き起こす可能性もあります。そのため、ふぐ調理師の仕事には、几帳面で慎重な性格の人が向いていると考えられます。どんな時でもリスク管理を行いながら、緊張感と責任感を持ってきっちりと処理工程をこなしていけば、事故も避けられるでしょう。
また、手先が器用であることも、ふぐ調理師には大切です。ふぐを捌く時には、皮引きを行ったり有毒部分を切り離したりと、包丁を使った細やかな作業が必要になるためです。この時、誤って毒の袋を破ってしまっては大変。さらに、ふぐは薄造りにすることも多く、これにも技術が必要です。器用に包丁を扱えなければ、ふぐをうまく捌くことは困難でしょう。
ふぐ調理師に関連する職業や資格
ふぐ調理師に関連する職業
ふぐ調理師に関連する職業には、板前やすし職人があります。板前は料亭などで顧客に出す料理を作る職業で、すし職人は寿司店ですしを握る職業ですが、日本料理やすしには食材としてふぐを使用することがあるため、ふぐ調理師を兼ねている板前やすし職人は珍しくはありません。日本料理やすしの技術に加え、ふぐ調理師免許を保有していることで、活躍の幅は広がります。
また、このような職業を含む、顧客に提供するための料理を作る職業を、まとめて料理人とも呼びます。さらに、その中でも西洋や中華などの海外料理を提供する料理人は、コック、シェフなどと呼ばれることもあります。
ふぐ調理師に関連する資格
ふぐ調理師に関連する資格として挙げられるのは、「調理師」免許です。「調理師」免許とは、調理や栄養、衛生などに関する知識を証明する国家資格で、多くの料理人に取得されています。「ふぐ調理師」免許を取得するためには、「調理師」免許が必要になるため、これらの資格は関連資格と言えるでしょう。
ただし、免許取得のためには、「実務経験を2年以上経て試験を受ける」もしくは「指定の調理師養成学校を卒業する」という条件を満たさなければならず、すぐには取得できないので気を付けましょう。
-
前の記事
映像プロデューサーになるには
-
次の記事
バリスタになるには